違和感とその正体の話




違和感があった。


まぁ違和感といっても吐き気・だるさ・何となく胸元辺りが痛いなど違和感で片づけるにはあまりにも不可思議なものばかりなのだがそれはまぁ別の話というやつだ。
ぼんやり洗濯物を干しながらんーとかあーとか唸ってみる。おもっ苦しい体。たぶんソファとか座った瞬間まんじりともできなくなってしまう。これは、まさか、いやいや。浮かんできた考えを瞬時に否定して、それでも、としつこく湧いてくる1つの考えを、何とか検証すべく、私は財布を握りしめて外に出た。






(自分は、どう思ってるんだろ)



今現在の状態に関して、覚悟がなかったわけじゃない。最初もそういう日だけど大丈夫かとむしろ文則を気遣う心の余裕さを見せたわけで、つまりはその時の私はそうなることを望んでいたわけだ。いたす前にもそういう発言はしているわけだし、でも、それでも、




ええい考えるな。もしも聞かれてたらどうする!!



ざけんなこのヘタレが!! と心中でぶち切れながらも、何のカモフラージュもなしにそれをレジに持っていく。そして帰宅。うわもう倒れてしまいたい。




使い方を熟読して周期を考える。あれ、そういえば一昨日あたりに来ると思ってたものが来なかった気が。


ぐるぐると目まぐるしい頭の中がつらい。すーーーはーーーーー。




いざ。


















ざーと掘り出し物の紙コップの中身を流して、握りしめた物を訳もなくトイレットペーパーに包んでトイレから出る。




くっきりと刻まれた十字、陽性陰性のマークがものによっては逆になることも知っていたからそこも確認済み。




「よー...せー...」




妊娠検査薬はたまに外れることもあるから、最終的には病院でハッキリさせるべきなのだと高校時代のお仲間から聞いたことがある。でも、確率が高い、とか、そういうことなわけで。




「妊娠、してるんだぁ...」



ぽつりとつぶやいた瞬間、自分のお腹がいきなり別の何かに変形したような気がした。ヤンキーやめますと宣言したときばりに煩い胸とお腹を撫でながら、ずるずると座り込む。



あ、そういえば、今日は普通に帰れる日って文則言ってなかったっけ、ごはん作らなきゃ。ごはんの時に一応の報告はしよう。病院、一緒に行ったりとか出来ないかな、無理かな、



ああでも、本当にだるい、ちょっと座ってよう。一応煮物の準備できたし、あとはできるのを待つだけだ。



しばらく、ぼんやり座っていたら唐突にくる眠気、格闘しているうちに焦げ臭いにおいが漂ってきた。




「え、やだ焦げ...っあ、報知器報知器!!」



ビ、と一瞬だけなった報知器を何とか止めて、これはもう食べられないなと思うくらいには焦げてしまった煮物を片付ける。外から聞こえる雨音。ああ憂鬱。





あれ、ちょっと待って、検査薬買う前私洗濯物干してたよね。




「...洗い直しだ...」



ぽたぽたと雫が垂れるワイシャツを見て愕然とする。ああ、もう、ため息をついて座り込んでしまった。



どうしよう、やることたくさんあるのに立てそうにない。ふと、ポケットで鳴る携帯。


ゆるゆると鈍い手で取り出せば、文則からのメールだった。



『遅くなる』



ゆえにご飯はいりません。無理して起きずに早く寝ろ。言外に語られる意味を目ざとく見つけるのは文則と知り合ってからついた癖だ。「そっか、頑張ってね(^^)/」返信して携帯を握りしめた。胸に刺さるようなこのさみしさは何だろう。薄暗い部屋が、いつもより広く感じた。





「...文則ごめん」





ちょっと、耐えられそうにないです。

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