ワンクッション!!
こちらは裏表現を挟むお話です。それでもいいという方下へどうぞ
いきなり突っ込もうとした文則を何とか押しとどめて、馬乗りの状態の文則の、裸の胸に手を当てる。ばっくばっくだよこの人。自分の手の冷たさと、文則の胸の暖かさに一瞬、手の先がなくなるという錯覚を覚えた。自分の手がチョコレート製であるかのような、そんな感じ
「えーっと...まぁ、私も聞いた話とか漫画知識だから分かんないけどさ、今の状態でいきなり入れたら痛いだけです。潤滑材なくて滑り悪くて皮引っ張られてお互い痛い思いするだけです」
よく分からないといった風に眉をひそめる文則。だよね。たっただのたってないだの、濡れただの濡れてないだのそういう基準のようなものがあって進んでいくもの...だと思う。レクチャー方法をああでもないこれでもないと考え続けていれば、大きなかさついた文則の手がやんわりと私の胸の頂上に当てられた。
「ふ、ぅ...っ」
「どうした」
「な、んか...びりびりする...」
本人としては私のまねをしてみただけなのだろうがちょうど、人差し指と中指に挟まれるようにある突起物から発せられる、くすぐったいとも痒いとも違うおかしな感覚に跳ねる心臓。それを抑えるように文則の手に力が入った。あ、だめだこれ、頭の中で何かが弾ける。
「わ、やだ、ぶんそ...〜〜っううっ」
「くすぐったいのか」
「ちが、くて...た、楽しんでない!!?」
一向に止まる気配のない手。最早揉んでいる。まあお粗末なサイズとはいえ男には早々機会のない感触だろう。初めてプチプチを触った子供のような驚きを無表情に隠している。
いい年してこの男は。
「...っひゃう!」
指があれに当たった。何ともまぁ可愛らしい声が出たものだと若干引き気味に感心していれば、さっきの反応が引っかかったのか連続してそこばかりを重点的に触ってくる文則。唇をかんでも抑えきれない声が恥ずかしくて、少し逃げ腰になれば私の体をぐいっと引き寄せて、今度はどうすればいいとばかりにこっちを見る。睨んでますよ。もう、怖いよ。
「噛むなら他の物にしておけ」
「は、もう...手遅れ、かも」
少しだけ広がる血の味が、少し懐かしく感じた。傷を舐めるように唇を塞いで、漸く意図が分かったらしい舌の使い方で歯をつついたり私のと絡めてみたりと動く舌も、漏れる息も、薄く眼を開けた先にある文則のいつもより鋭い目も、初めてが多すぎて頭の回転がついて行っていないような感覚がする。
「いつ挿れればいい」
「ばっさり...えっと...その」
大体の覚悟はしていたものの、いざとなるとここまで私の口は言うことを聞かなくなるのか。唯一身に着けていた下着と半ズボンを下ろして丸裸になる。恥ずかしながら先ほどのでもうとっくに準備ができてしまった。確かこの男は高校大学と生物関連の授業は取っていなかったはずだ。ぎりぎり保健。たぶんつけるものつけるってことといれるものいれるって知識だけしか持っていない。本当に大丈夫かな。
「こ、ここにさ、いれ......ひ、ぐっ」
いれる、と恥ずかしい言葉を吐く前に、文則の太い指が入ってきた。え、なんで。中をうろうろ当てもなさげにつつきまわる指が、文則のものだと考えるだけで意味の分からない感覚が背中を走る。
「こんなところに入るのか」
「ちょ、やだ、う...っンあ...!」
きつさを調べていただけらしい。水音が聞こえる。漫画の表現もあながちウソじゃなかったのかと感心する自分がどこかにいて、目の前でほっぺたを少しだけ赤くしながら眉間にしわを寄せる文則の首に腕を回して縋り付く
「鈴音?」
「は、ひぅあ...っやだ、ぶんそ...指、や、ぁ!」
抜かれる気配の一切ない指は小さな粒をかすめてはさらに奥に入って行ってしまう。そのうち、親指でそれを押さえて出し入れを始めてしまうものだから、もういろいろなものが限界寸前だった。
「ま、は、ぁいや、や、あ、あ、ああっ!!」
大きく体が跳ねて視界が明滅する。へたりとシーツの上に落ちた手足が重い。
「ど、どうした、気分でも悪いのか、病院にでも行ったほうがいいか」
「ふ、ぁ、は...っやめてその羞恥ぷれ...ふう...」
後で調べてこいと絶え絶えに言って、先ほどまで私の中を弄繰り回していた手を見れば濡れていて、小さい蛍光灯の光を受けてキラキラしている。うわ、
「たってる...」
「何か言ったか」
「いやなんでも...」
スラックスを持ち上げる明らかな膨らみ。こっちだけというのが少し癪で、こっそり手を伸ばしてそれを触ればびくりと体をはねさせる目の前の文則。してやったり、と思っていればどさりとかぶさって私の両手をつかんで束ねる。
「...なるほど」
「...へ?」
「男は狼だの獣だの言われる所以が分かった気がする」
そうですか、で、この体勢は?
「ちょ、え、まさか...やだ、え、ストップ、タイム!」
「聞かぬ」
短い言葉ののち、グチュリと刺さり埋まっていく文則のあれ。先ほどとは比べることすらおこがましいと思えるほどの感覚で意識が飛びそうになる。
「―――っあああ!!!」
「...っ声を、抑えろ...っ」
「む、ちゃ...っあぐ、う、あ、んンっ」
味を覚えた。そんな感じで律動を早くしていく文則が動くたびに声が上がる。止まる気がしない。またさっきのような感覚が来て、目の前の文則にしがみついた。
「っあ、は、あ...あああああっ」
「...っぐ」
お腹で何かがはじけて、べたんと文則と布団に挟まれる。二人揃って息を荒げる姿は何とも滑稽だ。
「...っホントは知ってたり...?」
「...したいことをしただけだ...」
そっか、とぼやいで、遠くなる意識を放り投げる。その瞬間に、口角を上げる文則が見えた気がした。