格好つけて靴紐結ぶ


「たーったらたーたらたーたーたーたっ」

『嬢ちゃんそれ何の歌じゃ?』

「ここに入った瞬間誰の心の中にでも響く音楽さ」



見た目カジュアルかつエレガントなカフェなのにね! 奥からどこぞの炎の妖精も真っ青な怒号が聞こえてくるよ!



「ようこそチャレンジャー! おいしい水いるか!?」

「あ、ウェイターさんですか? 結構ですので紅茶とチーズケーキとポケモン用のデザート注文したいんですけどメニュー表ください」

最初に出されるお冷のことかなって思ってたらペットボトル渡された。ペットボトルに入った水ってなんか違和感あるよね、蛇口ひねって飲みゃいいのにって前にネットで書いたらヒウンシティの人から都会の水不味いんですよって返ってきたからその余波かなーとか思いながら「セキ、アッチ、スワル」とE.T語喋りだしたウェイターさんの指示に従って座る。意味もなく伊達メガネかけたりしちゃうよ! 純文学の文庫本でも持ってくりゃよかった



『牛乳あるか?』

『番茶が飲みたいのう』



好きだね君ら、ポケモンにおすすめ! って書かれたメニューのところに抹茶のロールケーキとプリンがあったから即注文。金? いやー衣食ほぼ無料提供のポケセンのおかげで金が浮く浮く。
こりゃ鼻歌も出るってもんですよとほんこわのメインテーマ歌ってたら優雅に置かれる注文品、おー美味そう。



「いらっしゃいませ、先ほどはこちらの者が失礼しました」

「いいえー、気にしてませんので」



緑色の髪の毛の人のお辞儀にぴんと来るものがあった。やっちまったの私か、
おそらくさっきのウェイターさんはウェイターではなくジム専門で働いてるほうの人なんだろう。ジムに案内しようとしたら私がその好意をへし折ったと、やっべぇ土下座したい。



「挑戦者の方ですか?」

「まぁはい、挑戦しようと思ったらいい匂いしたんで食欲に負けましたチーズケーキおいしいですハイ」

「それはよかった・・・」



ウェイターさんの視線が千陽に向けられる。番茶啜って一息ついてた千陽がウェイターさんを見止めると立ち上がってぺこりと頭を下げた。



(“ここ”来たことあるのか・・・)



なるほど、ジム戦って聞いた瞬間に顔曇らせた理由がわかっちゃったよ私、ならば是非もなし。



「ウェイターさん」

「なんでしょうか?」

「紅茶の香り・味・色・渋みその他もろもろもうちょっとばっかし楽しみたかったのですがごめんなさい、後で改めて注文させていただきます」



ティーカップをお上品とはかけ離れた持ち方で持って一気飲み、伊達メガネをはずしてパーカーのポケットにしまう。さぁ君たちも名残惜しいのは重々承知だが掻っ込んでくれ。


「ひゃえ、ひゃああおーはなーは」(さて、戦おうじゃないか)

『口の中大丈夫か』

「大惨事なう」



prev next

bkm