「行けミネズミ! “でんこうせっか”!」
「さぁすっくん! 全身全霊の力で吹っ飛ばして差し上げなさい!」
ホォォォォォムラァァァァアン!!!!!
道路のど真ん中で喧嘩をやったらポリスメンが来るけどポケモン勝負をやったらどんだけ地面抉っても怒られないってこの奇跡な。
昴も千陽も野生期間(?)が長すぎたせいか周りのチンピラヨーテリーを蹴散らすくらいなら単独でやってのけてしまう、というのがここ最近売られた喧嘩を倍額で返しながら思い至ったことだ。
あ、ちなみにすっくんて昴のコトな! ニックネーム? 仮の名と呼んでほしいね。エリザベスがリジーになるみたいなあだ名もいいけど真剣なシーンで軽口叩くーみたいな場面あるじゃん? そこで適当臭漂うあだ名呼ぶとか格好よくね?
「そらそら、有り金10円くらいでいいからよこせや」
『チンピラにしても規模が小さいな』
今んとこ全戦全勝、いやぁ傷つく良心を「いやいやいやここで余裕ぶっこいて負けるほうがよっぽど格好悪いから」と奮い立たせて勝つ私、というかすっくん&ちーくん。こいつらマジ強い
・・・・でも、
次は負けねぇからなーと走り去る男の子を見送ってから日頃思っていたことを言うべく振り返る。延々と独り言を喋ってるだなんて不名誉な噂立てられたらたまったもんじゃないから人の形になってもらう。え? 今更? 知ってるー
「ちーくん」
「なんじゃ?」
「君さー・・・避けるの嫌い?」
肩がぴょいんっと跳ねる千陽、分かりやすいね君、
「あとさーすっくんや」
「・・・・・・」
「鳥怖い?」
「すまん・・・・」
いや、羽音がするたび僅かに体止まるんだよね。元から指令から行動がワンテンポ遅いのはポケモン特有の性格上の問題という奴だろうと、一応アララギさんのボヤキを聞いていたから知っていたけど、思考も動きも一瞬完全にストップしてしまうのは危ない。”でんこうせっか”なら直撃は必至だしそれ以外の技でも正直当たらざるを得ないことは多いだろう。
「いやー・・・ぶっちゃけ防御も好かん」
「あーだから今日ダンゴロ相手に頭突き勝負なんてやったのか、死にかねないからせめて迎え撃つくらいにしとこうか」
今度ルパン三世でも見せてやろうか、五右衛門のイケメンさ加減に惚れるかもわからん。ルパンの格好いい「逃げ」に感心すれば御の字だ。
言ってないけど千陽は明らかに短期決戦が向いている。早いし、攻撃強いし、一撃が重いらしいし、技を食らった面々が大体「やばいやばいやばい重い重い重い」と言っていたのがその証拠だろう。スタミナが少々低めなのも察することができた。
2人ともバトル好きってのは認知できたしね! いやぁキラッキラしてた!
「まぁあれだね、これジム挑戦も視野に入れるべきかなー」
何でもないような、そんな呟きだった。アララギさんもジム目指すのもありかもね! って言ってたし、君らはどう思う? って2匹を見る。
「「じ・・・む・・・・?」」
両極端、まさにそれ、昴は少し楽しそうに拳を握り、千陽はすこしどもって俯いている。あれれ、どなした?
「ちーくん?」
「あ、ああ・・・なんでもなかよ?」
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久方更新。はやく3匹目だいしたい・・・
bkm