「ヒサナちゃんはいるわよー」
「開けてから言わんでつかーさいアララギさん」
一旦家に帰って、パーカー&ジーパンと言うさしていつもと変わらない格好に着替えて鏡の前でシャキーンと決めポーズ的なものキメてたところにアララギさん乱入、調度ジョジョ立ちしてたから恥ずかしさはかなりの物です。
「忘れ物ないの?」
「タブンネ、と言うか何この鞄、パソコンやら何やら全部入ったんだけど」
「そこらへんは突っ込まない」
「はーい」
「・・・・・・・・」
「・・・・・・・・」
黙り込むアララギさん、つられて私も黙る。
こう言う空気嫌なんだけどな、アララギさんが神妙にも程がある、と言わんばかりの顔で此方を見る
「ヒサナちゃん」
「はい?」
「本当に、あのミジュマルを連れていくの?」
「・・・ロンモチです。もちのろんですよアララギさん」
アララギさんに『パートナーのポケモンは何がいい?』と聞かれた時に即答で『あのミジュマルくんで』と答えたのは数週間前の事だった。
パートナー、基相棒として昴を迎えたものの、あの子を諦めたワケじゃない。朝だって仲良さげだったしいいじゃないか。万々歳だ。
「そう、」と小さく呟いたアララギさんが去って、ぼんやりと頭を停止させる。ソファにボフリと座り込めばギシィッと音がする。そこまで重かねぇぞ頑張れやソファ隊長よ
「・・・・・はー・・・・」
ふっかーくため息をつく。何だこの気分は、今日は遠足だヒャッフイとか騒ぎながら外出た瞬間雨が降ってきた。そんな感じだ。
『・・・・・嬢ちゃん?』
「ウェッヘイ!! ってミジュマルくんか」
『おん・・・』
いつの間にか入ってきたらしきミジュマルくんがドアのとこにいた。たまに来るけど大抵アララギさんと一緒だったから2人なんて久しぶりだ。
「何してるのかねミジュマルくん あ、お茶飲むかい?」
『貰おうかのう
なーんもしとらんよ、ぼーっとしとったんじゃ』
「うむ、重要なことだよね」
『じゃの』
「・・・・・・・・・・」
『・・・・・・・・・・』
沈黙が苦しい、気がする。言葉が分からなくてもこうだったんだろうなと思いながらお茶を淹れてミジュマルくんの前に座りこんだ。
『不思議な気分じゃなぁ』
「お?」
『今、嬢ちゃんと喋っとる』
「確かにね、ミジュマルくんがまさか私の事嬢ちゃん呼びだとは思わなかったよ」
『・・・嬢ちゃん、』
「ん?」
『わしはなんも持っとりゃあせんから餞別も何もないが・・・元気でな?』
笑いながら言うミジュマルくん。
あれ、意志のすれ違いを感じる希ガス
「来ないと言うのかワトソン君」
『わと?
じゃって・・・ぱーとなーには昴くんがおるじゃろ?』
「ミジュマルくんも誘いたくて昨日徹夜で2人の名前考えてたのに酷いわ睡眠泥棒ね」
『うん、意味わからん』
「だろうね」
『・・・・・・・・・・・』
「・・・・・旅嫌いとか?」
『何が?』
「旅に行かない理由」
『違うよ、
・・・・・わしはのう嬢ちゃん、見えとらんのよ、こっちの目』
そう言って指差すのは色素の薄いほうの目、昔初めてあったときに「オッドアイ萌ぇぇぇぇ」と叫んだことに後悔はしていない
「完全に?」
『おん』
「へぇ・・・・」
『・・・・・・・・・・・』
「・・・・・・・・・・・え、だけ?」
『そうじゃけど、え、だけ?』
「もうちょい重いもんかと身構えたわ」
『え、じゃって、欠陥品なんぞいらんじゃろ?』
「誰が言ったんなこと」
『・・・・・・』
気まずそうに黙るミジュマルくん、何度か捨てられたのかと思い至る。
「・・・もしよかったら、というか・・・その、ミジュマルくんが旅行きたいとか思ってるならさ、チャンスをください」
『?』
「いや、さっき言った通りシリアス苦手で頭お気楽でミジュマルくんの悩みとかまともに受け入れてないところはあるそこは猛省しよう、」
『お、おん、つか嬢ちゃんしゃべり早いの』
「取柄さ! しゃあない」
『しゃあないのか』
「で! 旅行きたいのか行きたくないのかやる気がないのかさぁどれ!」
『むっちゃくちゃになっとらんか?』
「きにしないきにしない」
『・・・・・・行く』
「よっしゃ」
「仲間二人目―! つか匹目―!」
『どんどんぱふー!』
「テンション高いね昴」
『でも表情筋的なものが一切動いとらん』
『む、そうか・・・』
「動かす努力は一切しなくていいからね昴君」
何事も自然が一番さ
「さぁてと昴! 千陽(チヒロ)! いっきまっすよー」
『わしの名前か?』
「おういえす、たったか参るよー」
bkm