感謝祭作品 | ナノ
どうにも、最近妙なものに好かれてしまった。




ぼんやり、プスプス黒煙を撒くだけの黒い何かとなってしまったものを見下ろしながら、横で「ふうっ」と爽やかな汗を腕で拭っている人物(これがアウストラロピテクスから始まりホモサピエンスに終わる霊長類的な何かに分類されるとは到底思えないのだが一応人のような形をとっているので人と言っておく)から距離を置いた。理由としては来ないでくださいが5割、こいつ指先から雷出しおったが4割、その他もろもろを合わせて1割と言ったところだ。



「なぁ、アンタ大丈夫か?」



くるっとこっちを向いてニコッと笑って子首を傾げる。そんなあざといしぐさをやってのけたその化物に、私は何故か酷く気にいられているらしい。














さて、時はあの黒焦げ製造機こと雷獣夏候覇さんと出会ってから3カ月ほど後になる。



「相っ変わらずなまえは妖怪ホイホイだなぁ」

「人をどこぞの害虫駆除の道具みたいに言わないでくれません」

「あー、悪い悪い。」



相変わらず私の足もとにはさっきまで食欲旺盛と言わんばかりの台詞を並べていた大きな鰐のような化物の黒焼きが転がっていて、実行犯である夏候覇さんの体の周りにパチンパチンと水色の電気が弾けている。
不本意ながらそう言ったものを引き付けやすい私を何故か誰に頼まれたわけでもなく、自らボディーガードを買ってでているわけだ。よく分からない。
へらっと笑って「怪我はないか?」と聞いてくる夏候覇さん。怪我なんて負う時間すらなかったのに毎度ごとく心配てくれるものだから、恥ずかしさと情けなさで抱えた後ろめたさがもぞもぞと浮き彫りになっていく。



「いつも、ごめんなさい」

「んあ? 何が?」

「いや、その、いつも守ってもらっ、て」

「うえ!? あ、え、いやいや、守るとか、そんな大層なことじゃないし!!」

「え、でも、守ってもらっているのは確かですし」

「いや、そりゃ、まぁ守っちゃ、いるけどさぁ........
それは結果としてだし、本当に、その、アンタが思ってるほどきれいな理由でこんなことやってるわけじゃなくてな、」



最後辺りは口がもにょもにょ動いているだけだった。え、何聞こえない。そう呟けば、ぐわっとこっちを向く夏候覇さん。少々小さめの背丈が食いつくように見上げてきて、うわはいなんでしょう!!? と声を荒げてしまった。



「あんたにああいうのが寄ってくるのが嫌」

「え、なんで」

「そう返すかよ、普通」

「え、普通どう返すのですか」

「なんでだろうなぁ、ものすごく恥ずかしい」



体勢のアップダウンが激しいな夏候覇さん、しゃがんでしまった彼につられるようにしゃがめば、眉間に思い切り皺を寄せて、思い切り言いにくそうにこっちを見る。




「しょうがないだろ、好きなんだから」





今の、聞かなかったことにしていいですかと言ったら、



まぁ、次に黒焦げになるのは私かと思った。