感謝祭作品 | ナノ
「あ、」

「あ?」



隣で俺の呟いた言葉を復唱する白桜を申し訳ないが触れずに、懐やら荷物の入った袋やらを漁った。いつもはピンとくるはずの予感が冴えなかった今日この日、白桜を連れて町に下りたのがいけなかった。まぁ後悔しても遅いわけだが。
目当ての物はなく、嫌な予感はどんどん大きくなっていく。あーもう、しょうがねぇよなぁ



「白桜、これ持っててくれ、重いけどちょっと我慢な」

「は、い」



少し罪悪感が湧いたがすぐに解決するからと自分に言い聞かせてあたりをぐるんと見回す。ああ、少し遠いな



「悪い」

「へ、ぇえ!? り、李典兄さま!?」



荷物ごと白桜を抱えあげて走り出す。混乱と恥ずかしさでわぁわぁと声を上げる白桜にもう一度謝って目的のところまで急ぐ。でも、ああああ、間に合わなかった。



空から小雨の段階を無視して勢いよく降り出す雨を何十滴か食らいながら目的地の屋根のある小屋まで走る。到着したころには髪の毛から水滴がぽたぽた落ちるくらいには濡れていた。荷物は雨に気づいたころから白桜が小さい体で頑張ってかばっていたからそれほど濡れていない。



「はい、てー.....んな逃げんなよ、濡れなかっただろ」

「あ、ご、ごめんなさい、じゃ、なくて、でも、えっと、ありがとう.......あれ」



降ろした瞬間水滴が落ちないぎりぎりの辺りまで後退する白桜。分かってるって、びっくりしたんだよな、恥ずかしかったんだよな、それでも運んでもらったのとそれほど濡れずにすんだってことへの感謝で最終的に何言えばいいのか分からなくなってんだよな、多分、と言うか大方合っている。



「雨、もっと強くなるぞー、こっち来いって」

「、は、い.......」



座った俺の2歩ほど先に立って、荷物を置いた瞬間に、ばーっと地面を叩くような大雨が降る。
少しだけ隙間が空いて間誤付いてからかこんと頭を下げた。



「お、重くて、ごめんなさい」



一瞬固まった。重いと感じるわけがないのになぁ、とぼんやり考えて、ぐしゃりと少しだけ濡れた頭を撫でる。



「俺の武器なーんだ」

「? あ」



少し考えて、思い出して、それでも納得いかないのか呻く白桜。車旋戟の重さは白桜何人分って話だし、荷物があろうと変わりはない。それで何でこんな申し訳なさそうにするのか、



「持ってもらっているとき、その、騒いで、ごめんなさい」

「気にしてねぇぞ?」

「で、でも、結構、うるさくしてしまいましたし、」



心底申し訳ない、そんないつもの顔で謝って、さてこれをどうやって止めさせようかと思案する。「で、でも」さっきよりもか細い声がして、頭を止めれば、不器用にはにかんでいきなり力のこもった声を発する。



「運んでくださって、濡れないように、してくださって、ありがとうございました」



いい子だよなぁ、本当に。