嫌な場面を見てしまった。1時間たっても2時間たっても、いつまでもいつまでも、嫌になるくらい頭の中をぐるぐるするから何もする気が起きないで、適当に歩く道はもうどこかも分からない。
元就さんが、綺麗な人と一緒にいた。そんな場面を見たのは元就さんお帰りが遅い日が続いていてもたってもいられなくなった日の夕方で、今は夜だ。
走って、歩いて、涙を拭いながら速足して、いつの間にか見慣れない道でぼんやり突っ立っていた。
何時もなら家で元就さんの夜食を作っている時間。ああ、材料もなにもないや、買わないと、ああ、でも、どうでもいいか、
ピカピカ光る原色系のネオンが、下ばかり見ていた目に突き刺さる。ずっとドロドロして、気持ち悪いままの心を抱えて、虚無感と脱力感が抜けきらないまま、帰らなきゃと、冷静になった頭で体を反転させる。そのとき、
力なく垂れ下がったままの腕が、がしりと掴まれた。
「.........っ」
離して、そう言おうとした口は、小さい悲鳴だけ漏らして、それっきり動かなくなった。体の大きな人が、にやにや笑いながら私の腕を掴んでいる。その人の後ろには、似たような顔をした人がいて、寒気が背中を駆け回る。何をする気かなんて火を見るよりも明らかだ。なんでやなことばっかり起きるの、なんで、なんで、なんで
ガッッ
「汚らわしい手で、我が妻に何ようか」
元就さんの声だ。いつもよりもさらに冷たい声に、どうしてここにいるのかとか、そういう質問をする気にもなれず、黙って手を引かれるままに歩くしかなかった。
あ* * *
「んっ........っやだ.......、ふ、ンん.......!」
「....っ、今日は手加減する気もない、せいぜい覚悟せよ」
ホテルらしきところについた瞬間押し倒された。イラついてるというか、怒り心頭と言った表情の元就さんに荒々しく口をふさがれたまま体を弄られる。今は触ってほしくなくて、抵抗した手はだけどネクタイで一纏めにされた。
「あ、ああ、や....っ、ひぐぁああぁっ」
慣らされもせずに突き刺された元就さんのが、お腹の中で暴れるたびに悲鳴じみた声を上げる。そんな拒絶の声を、元就さんの口が止めた。
「......っふ、や、やだ、ぁ、んっ」
「そなただけぞ......っ、何故、何故我が斯様に心を乱されねばならぬ.......っ」
「........っそんなの、んっ、こっちが聞きたいよ、ひぐっ、きれーなひとと、一緒にいたくせに、ぃっ」
言いたくなかった言葉は案外するりと口に出て、ボロボロ流れる涙は元就さんの細い指に掬われた。
「嫉妬か」
「.......そーだよぉっ、ここ、どろどろ、してっ、こんなの、っいやなの、に、っひあ!」
唐突に、手で押さえた胸のあたりに吸い付いた元就さんと目が合う。さっきと打って変わって弓なりに上がる口角。
「そなたが見た女がどれかは知らぬが、我がただ一人と思う女はそなただけと、そう覚えておれ」
自分がここまで、単純な頭をしているとは思ってなかった。