両親が揃った茶の間でまさかの檀み....とか、下ネタ連発とか、笑ったら変態扱いされてしまうんじゃないかと肝を冷やす瞬間に似ているかもしれない。
『だって、私っ....ずっと好きだんたんだもん!!』
『深雪....お、俺だって、ずっと、お前が........』
『隆也くん....』
目の前、というか画面上で繰り広げられる、最早同じ人類同士とは思えない程の甘々ラブコメディを見ながら、ソファに座って、元直と2人、特に何をするでもなく無言でいた。ちなみに両方体育座りだ。
適当に、共通で好きなバラエティを見終わって、チャンネルを変えることなくぼんやりしてたら少し昔の携帯小説が原作の恋愛映画が始まってしまったとか、そういう流れだ。私が好きなのはアクションだし、元直がどんな映画を好むかとかは知らないけれど、いつも読んでる本から推測すればミステリー系だ。
そこからはめくるめく愛の日々、遊園地デートだの放課後デートだのを繰り返す2人、しかしこんな日常は長くは続かなかったのでしたーとまぁそんな流れで、隆也くんが余命を宣告されてしまった。細胞によるうんたらがかんたらで....正直良くわかっていない。
「え、ええ、と....」
元直が頑張る。何か言いたいようだが動かない。どうした。なんか喋ってくれ。
「え、えっと、なまえは、こういう王道の展開に憧れたり、するのかな、て、」
「あー、まぁ、それなりに、似合わないのは分かってるんだけどねー」
「そんなことはないよ!」
「そっかな、」
「あ、うん........」
目の前では、泣きながら不安を口にする深雪ちゃんを隆也くんがおどけながら叱っている。何というバイタリティ。
無言になってしまった元直を見れば、顔面に「考え事なう」てか書いてあるんじゃないかと思うくらいわかりやすく何かを考えている。
「あ、大丈夫だよ? 元直に求めてるわけじゃないから、」
似合わない、と言うか、想像できない。
言い終わってからなかなかに失礼な言葉だったと思い至って、
謝ろうかと元直に再び視線を向けた。
「へぇ」
するりと唇をなぞる指に全身が粟立つ。短い悲鳴を上げる私の顔に自分の顔を近づけた元直の片手が、逃げようと後ろについた私の手を掴んで離さない。
「そう言う事いうのは、この口?」
肉食獣に狙われた草食動物にでもなった気分だ。「なんてね」とか言っても誤魔化せないからな。