感謝祭作品 | ナノ
「手、手がっ」

「だからお手伝いいたしますと言っておりますのに........」



寝台に座ってギチガチ音を立てながら軋む鎧を何とかはずそうともがく仲権様を見るのは、さて何年前から続いているのか。仲権様の重厚な鎧は外すにも逐一時間がかかるわけで、気づけばお手伝いするようになっていました。気づけば身の世話を焼くようになっていた私にとっては当たり前の進化、と言うか、当たり前のながれのように思います。



「はい、右腕失礼いたします」

「おー、なんか、悪いな、いつも」

「何を仰いますやら、今更です」



がちゃりと外れていく鎧を丁寧に並べる。だんだん見えてきた太くがっしりした腕が目に入った。「ふぅ!」と解放された身軽さに体を右往左往させて伸びをする仲権様。二人揃ったため息が少し可笑しくて笑った。「お疲れ様でした」と、言おうとした口が仲権様の行動1つでガコンと動くのをやめた。ばさっと乱暴に投げ捨てられる肌着に、やっと口が開いたのは少し時間がたってからのことでした。



「何なさっておいでですか!」

「いや、暑いし、汗で気持ち悪いし、」



分からなくもありませんが付の女官とはいえ女の前で上半身素っ裸と言うのは如何なのでしょう。ここは仲権様の私室。昔からのなじみとはいえ女と2人でいる状態で、無防備極まりないというか、私がいろんな意味で害なす輩だとしたらどうするつもりなんでしょうか。



「なまえ、顔赤ぇけど、どうしんだ?」

「私が男の裸になんも反応しない女だとでも思っておいでですか」

「えー........て言うか、今更だろ?」

「今更とは! 私嫁入りもまだの小娘なのですが!」

「いやいやいや、そういう意味じゃなくてさ」



下は穿いているものの、未だに上半身素っ裸の仲権様が立ち上がって近寄ってくる。ぎりぎり、生まれてこの方私の方が身長が高いため、至近距離になると見上げる体勢になってしまうのが気に食わないと昔からおっしゃっていたのを思い出した。「なぁ、なまえ」



「今更上半身裸程度で顔真っ赤にすんなって、そのうちもっと恥ずかしい恰好見せる気でいるんだぜ? 俺」

「っ、ち、ちゅうけんさま、ちか、」



下がりながら、にじり寄る仲権様から逃げる。いつもの、ゆるんとした笑顔のはずなのに、背中あたりがぞわってするのはなぜだろう。言いよどんで、退路が完全にない状態になって、そろそろいろんな意味で限界に達しかけた時、仲権様がかこんと首を下に曲げた。



「あー、わり、逸りすぎた、」

「.........え、あ、」

「安心しろって、まぁ、時間かけて口説くつもりだからさ」





な、何を仰っているのか。