『おーっすなまえ!』
目立たず、それなりの位置を保っていたつもりだった。男子といろんなこと話すのも苦手だし、そもそもテンションについていけない。それなのに……
「どうしたの、李典君?」
『おまえの家さ……WiiUあったよな?』
携帯越しに何ともうれしそうな声を響かせて来る同級生の李典君、この男に目をつけられた日のことはいやなくらい覚えてる。よくある、本を取ろうとして手が当たったとかそんなスタートだ。本当にあるとは思わなかった。しかもその本の正体がゲームの設定資料集。色気も減ったくれもありゃしない。
しかもさっさと去ればいいものの「あ、わりぃ攻略本かと思っちまった」という言葉に思いっきり説教かましてしまったのだ。だって、攻略本とかさ、邪道じゃないか、ギャルゲーの選択肢ぐらい想像と空想で何とかしろよ、ときメモの選択肢簡単だろ
「あるけど……..何」
『いや、濡烏買ったんだけど一緒にどうかなーって、』
「よそでやれ」
濡烏….......まぁ、零シリーズの最新作のことだけど、確かにあのシリーズやりこんでるけれど、何が悲しくてホラーゲームを男と二人でやらねばならんのか。
「深紅ちゃんの子供が出るって時点で却下、しない」
『あ、俺海咲派』
んなこと聞いたわけじゃない。海咲が好きなら月蝕やってりゃいいのに、こっちは深紅ちゃんが百合百合しい生涯を遂げると思っていたんだ。普通に怜さんと百合すると思ってたんだ。この仕打ちに泣いたのは私だけじゃない。
『まぁ、確かにあそこまでフラグ立てといてって感じはあるよなぁ』
「!! だよね!!」
あ、しまった。思った時には遅かった。電話越しでにやける李典君の声がする。
「へへ、お前とは気ぃ合う気がしてたんだよな、だから、性別抜きにして楽しみてぇっつーか、まぁ、分かるだろ、」
分かる、と言うのは共闘プレイものを1人でプレイすることの悲しさのことか、ネタゲームをボッチでやる虚しさのことか、まぁゲーマーの共通意識ってこのぐらいだろう。
『って言えば安心してくれるだろ?』
「李典君って本当に怖いな、」
『え、どのくらい?』
「XYのチャンピオンロード」
『ポケモンは……サファイアで止まってんだよなぁ』
ここまでは安全、そんな線引きが今までは見えていたのに、急に無くなってどう動けばいいのか分からなくなった、そんな気分だ。どこに門番がいるか分からずうろうろしていたらいつの間にか四天王に挑戦する羽目になっていた、その気分は分かるまい。
『ま、来るなって言われても行っちゃうぜぇ俺!』
「……サイコブレイク悪夢モード付き合ってくれるならいいけど?」
『おういいぜ! って、ん? 俺そのゲーム知らねぇんだけど』
「緑のジュース(人体(プレイヤー)改造材料)集めながら事件解いてくハートフル(ボッコ)ストーリーだよ」
『タイトルとモード名からして嘘だろ!!』
まぁ、面白いからよしとしよう