▼ 質問をもう一度聞いてもいいですか
ピンクのおもちゃにざらざらの縄、突き刺さる冷たい風と、釣り上げる口の端。
喉がカラカラだけど、前のも後ろのも痛いけど、それでもいい。
「気持ちいい」ってうそつかないと、「痛い」なんて言っちゃいけない、あ、でもたまには言わないとな、嘘だってばれちゃう。
イインチョ逃げたかな、無事だと良いなー、「なんだこれ」って、男の人が私の指につけられた絆創膏を爪で剥がそうとしてくる。
「だ、めぇだよ......っん、こっち、しゅーちゅーしてくれないと、っん、や、あぁっ」
絞めつけてあげれば、ケダモノみたいな笑顔のお兄さんが乳首を思い切り引っ張った。痛いなぁ、千切れたらどうするんだ。
ざりって、コンクリートの床に押さえつけられてのバック位。すぐに四つん這いにされて口に突っ込まれた一物にむせながら喉まで迎え入れる。
なんでだろ、すごくやだ。いやだ、きたない、気持ち悪い、こわい、辛い、にげたい
散々やってきたことなのに、いやだ。なんで、こんなにせんせーの顔が頭に浮かんでくるの、なんで助けてって言おうとするの。
胸に散らされた鬱血痕がまた増える。体を捩った動きで縄が食い込む。ドロリって、お腹の中で精液が溢れる。やだ、やだやだやだ。
「ぃ、やぁ........っ」
チリってする胸の周りのすぐ後に、ぬるぬるした唇が私の唇を食べる。あああ、せんせーにキスしてもらったのに、やっぱあれはトクベツだったんだ。せんせーは私のトクベツなんだ。だからこんなにも違うんだ。だから、出てくる涙がこんなにもしょっぱいんだ。
本当だったんだーって、ぼんやり、建物の隙間から見える空を見る。濡れたカーディガンをぺたーってかけられて、それだけ。
丸裸で、おいてけぼりにされちゃった。
「さ、むい、なぁ、」
さむい、さむい。頭に浮かぶのはピンクのブランケットと、先生の手。真ん中だけ温かくて、後は冷たい、そんな、手が、浮かんで、
星は見えない。周りが明るいと見えないって聞いたけど、本当だったんだ。お月さまどこかな。今日は見えない日かな。新月っていったっけ、
カツリ、革靴の音だ。ハイヒールはもうちょっと音が高い。おまわりさんだったらヤダな。捕まったら今度こそ学校やめなきゃいけない。
仰向けだから、涙が流れずに目にたまる。建物の戦すら見えない。けど、あれ、不思議ぃ
「おつきさまがー.......ふたぁつー」
近いなー、きれーだなー、届くかなー、
力の入らない腕を持ち上げて、お月さまに手を伸ばす。こんな話あったなぁ、池に映ったお月さま取ろうとしておぼれて死んじゃったお猿さんの話。
いいなぁ、偽物だったけど、それでもお猿さんはお月さまに手が届いたんだ。手を伸ばせたんだ。
私は無理だ。自分の汚さに怖がって、手が伸ばせない。
「せんせぇ........すき、すきだよ、すきなの.........すき........すき.........っ」
伸ばした手を目の上に置いて、口を開けばそんな言葉が出た。好きってこんなのなんだ。びっくりだ。
「手のかかる奴よ」
静かな、声がして、手を掴まれる。立てるわけがなくて、上半身が起き上っただけだった。ばさって、被せられた布で目の前がまた真っ暗になる。
あれ、この、におい
「............
せ、んせ.......?」
「何をしていた」
「.....あ、そんで、たのー......」
答えたら、ふわふわしたものが顔に当てられた。あ、あのブランケットだ。理解するのは早かった。ゆらゆら揺れてる気がして、気付いたら背中と膝の裏に、何かが当たってる感触がした。目の前は真っ暗なままだ。
抱えられてるって、分かるのに少しの時間しかいらなかった。
「せ、んせ、はなして.........っや、やだ」
「..................」
黙ったままのせんせーが、怖くなった。離してほしくて、「やだ」って、ずっと言ってたら。目の前の布がパカって開く。こっちをみる、お月さまが2つ。あれ、さっき見たな。そう、思い至ったときには、
せんせーの口が、私の口を塞いでた。
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