「おーい、アーシェー.......出てきちゃくれねぇかい」
(やだ)
マルコさんのベッドの下に潜り込んで、しょぼくれる僕を何度か引きずり出そうとするマルコサンの手から逃げる。あの猫は一応サッチのお兄さんに渡しておいた。同族食べる趣味はないけど美味しいんじゃないかな。
そんなことはどうでもよくて、散々守りたいなんて大口叩いておきながら、僕は今のところ何一つ守れてはいない。ため息が泣き声になって出てきた。
「アーシェ」
んな所に入られちゃ撫でられねえだろうが
そんなマルコさんの声にもそもそと隙間から出てきて、マルコさんの前で頭を垂れる。むしろ、いっそ叩かれてもよかった。ひょいと脇腹を引っ掴まれて膝に乗っけられて、むすっとしたマルコさんの目とかち合う
「前にも言ったはずだかねぃ......」
怒られる。
「年頃の若ぇ娘が肌だしてんじゃねぇよい!! 野郎ばっかの船でおかずにでもなる気か!!!」
え、そっち? と驚くのに3秒。言われてたことを思い出して4秒。人の姿になって口を開く。
「ごめんなさい......」
「分かってやってんなら末恐ろしい娘だよい......」
被せられた布団に、そういえば全裸だったと思い出した。
「だって、こう、しないと、言葉、通じない、から......あの、マルコさん」
「......なんだい」
「おかずってなに?」
「その格好で言っちゃいけねぇ言葉だってことを覚えときゃいい」
首をひねって、とにかく行っちゃいけない言葉だと判断して頷く。撫でられた手で髪の毛がくしゃくしゃになってしまった。
「さっきのことは気にするない、1600人もいて気づかなかったって恥ずかしい話なだけだよい」
「でも、僕.....その......」
「そんなにしょげられると褒めてぇのに褒められねぇよい」
褒める場面なんてあったろうか。犯人は捕まえたけど、だからと言ってご飯が返ってくるわけじゃない。たまったもやもやは心の中でバタバタし続けていて、どうすればいいかわからない。
ふてくされる僕の頬っぺたを、マルコさんが片手で潰した。ぷしゅと変な音がして、可笑しげに笑うマルコさんが見える。
「さっきの立ち回り、すご「アーシェ――――――――!!!!!」
バァンとマルコさんの扉が勢いよく開いて、大きな音がした。マルコさんの声はかき消されてしまって何を言っているのか分からない。あ、不機嫌な顔。
入ってきたのはイゾウのお兄さんとビスタのお兄さんで、無理に笑顔にしているといった感じのイゾウのお兄さんが口を開く。
「ちっと来い、今すぐ来い、あ、服着てからな、甲板な、」
「へ? え、あ、はい」
頑張って頷いて、訳も分からないまま見送って、少しひしゃげてしまった扉を指さしながらマルコさんの顔をうかがい見れば、重いため息をつきながら僕の頭を叩くように撫で始める。
「まぁ、いつか言ってやるよい」
何を? 聞こうとしたけれど、そのまま送り出されてしまって、ついぞ聞くことはできなかった。
タイミングずれずれ