居づらい。




じーっと僕を見て動かないマルコさんの視線にさらされること早数十分。いなくなったカティアのお姉さんとイゾウのお兄さんは本当にどこに行ってしまったのか。叶うなら帰ってきてほしい。



「アーシェ」

にゃあ

「........武器庫、入ったのか?」



頷く。嘘だけど。ごめんなさいと、口の中でつぶやいた。



僕は、少しでも長くあなたのそばにいたい。でも、人の姿じゃ、猫じゃない僕は一緒にいられないんじゃないかって怖いんから、それなら僕は猫のままでいたい。



「本当にかよい」

にゃあ



沈黙、前に見た。心配の顔をするマルコさんを見るのがつらかった。そんな顔させたくて僕は一緒にいたんじゃないのに、ごめんなさい、ダメな猫で、俯いた僕を、マルコさんの手が抱きしめるように包み込んだ。



「アーシェ、武器庫ってのはな..........確かに刀やら弾やら危ねぇ物がいろいろ入ってる。そりゃ抜き身の剣くらい転がってるだろうよい......」



でも、と区切って、手の力をすこし強くするマルコさん。抜け出せないこの状態に、少し背中がぞわりとした。






「だからこそアーシェやステファンがケガしねぇように、お前らが入れるドアは付いてねぇんだよい。他の奴らにもアーシェたちを入れねぇように言ってある」





だから、お前は武器庫で怪我するワケがねぇんだ






重くのしかかる言葉に、心臓が鉄にでも変わったような気がした。動けない。



嘘をついたことが、バレてしまった。マルコさんに、僕を助けてくれた、神様に、



マルコさんの手が、やさしく動く。チャリ、と、マルコさんからもらった首輪が音を立てた。



「アーシェ、



俺は、お前を疑いたかねぇんだよい」









プツリと、頭の中で何かが切れた。
















「.......」



人の姿になって、へたり込んだ足と、その横についた肌色の手を見る。言葉が、出てこない。



「........実の能力、じゃなさそうだねい」

「...っぼ、く........猫で、化け猫、です.......」



涙が止まらなくて、ぽたぽたと木の板に染み込む。




「猫の姿が本当ってことか」



涙としづらい呼吸のせいで言葉が出なくなって、無言で頷く。
嫌われる? そばに置いてもらえなくなる?




マルコさんの影が動いて、立ったのか、なんてぼんやり思った。




ああ、そっか、もう傍にいれないのか、しゃくり上げながら離れて、最後にお礼の一つでも言おうと呼吸を整える。



ありがとう。幸せでした。離れるから。もう見えないところに行くから。だから、あなたからもらったこの首輪だけはください。


こんな言葉しか思いつかないけど、それでいいかな






口を「あ」の形にした瞬間、マルコさんの服が背中にかけられた。




「年頃の娘が素っ裸晒してんじゃねぇよい」




かけられる、いつもと変わらないやさしい声。


怒ってない・・・? 怖がってない・・・?



気味悪がって、ない・・・?




「怖かったろ........悪かったねい」



服越しに、僕を撫でるマルコさんの手が、頭に移動した。ひょこりと生えた耳と髪を一緒に撫でながら、頼むから落ち着いてくれと小声で囁くマルコさん。



「ま、るこさん」

「ん」

「まるこさん」

「なんだい」

「ごめんなさい、ごめんなさい....ごめん、なさい.......」




子供をあやすような、そんな手つきでなでる手がとても心地よくて、意地汚く抱き着く僕の、マルコさんはずっとそばにいてくれた。






叶うなら、永久の忠を






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急展開のやらせ臭さがすごいですね。伏線の回収!ってプロットノート書いたのに。
素っ裸の女の子と服着た男って図柄が禁忌っぽくて好きです。


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