「狭かねぇかい」

大丈夫だよ

「寒かねぇかい」

ううん、温かいよ




今日は買い物があるらしく、マルコさんのポケットに入れられて外を歩いている。周り一面に「ゆき」が降っていて、冷たくて痛くて中々踏めずにいたらマルコさんが入れてくれた。
普段は薄着のマルコさんもコートとか色々着てて、サッチのお兄さんが更に色々着込ませようとしてた。あ、僕もナースのお姉さんがくれたマフラーとかをぐっるぐるに巻いてる。マルコさんのポケットが僕とマフラーでいっぱいになってしまった。もっこりしてるって皆が言って笑ってた。


たまにマルコさんの手がポケットに入ってきては僕の頭やのどを撫でて出て行く。
隙間から見えるゆきはたまに入ってきては僕の毛に乗っかってすぐに消えてなくなってしまう。幻のような、そんな感じのものかなって触ってみたら手が濡れてた。水? なんでだろ、水からあんなふわふわした物ができるのかな、




ふいに、名前を呼ばれてポケットから顔を出す。見上げればマルコさんの髪の上が少し白くなってた。は、払いたい。埃じゃないのは分かってるけど



マルコさんの大きな手が僕を掬い上げる。冷たい空気にさらされて身震いしたけれど、すぐにマフラーで包まれて、マルコさんは1軒の建物に入っていった。



「いらっしゃいませ、ネコちゃんもご一緒ですか?」



ナースのお姉さんくらいの女の人が話しかけてきて、マルコさんが適当に返す。案内されたテーブルに座って僕を下ろすと、僕が入っていたポケットとは反対側のポケットから金色に光る何かを出した。



「やる、よい」



ネックレスのようなそれは、輪っかを2つ作ってから僕の首におさまった。絡まりかけた毛をマルコさんが解して、まぁこんなもんかと呟く。





チャリと音が鳴って、細い鎖の先に、何かが付いているのが見える。すこしずしりとくるそれは、アーシェになって見なかった日はない物の形をしていた。




(十字架に、月.......)



マルコさんの胸にも描かれたその形が、僕の首もとできらきらと輝いている。流石に猫に入れ墨は彫れねぇからよいと言いながらちゃりちゃりと鎖を弄るマルコさん。





ゼロリットルの号泣




ああ、猫でよかった


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