「きも、だ、め、し・・・・?」

「そ! 今日の夜にクラスでやるんだって! 凛久も行くっしょ?」




ああ、来た。ついに来てしまったと、凛久は心の奥底で頭を抱えた。そこそこ仲良くなり始め、夏休みも間近になり、七不思議やおかしな約束があるというお膳立ても完璧で、この案が出てこないわけがないのだ。そして何より凛久の担任はあまり見えない物のことを信じている訳ではない上に中々に放任主義なので二つ返事で今日の夜に学校の中を練り歩く許可をノリのいい委員長に与えてしまった。なんというユルユル。



「えー、うーんと、どうしようかな・・・・」



逃げたい、避けたい、遠慮したい。しかし凛久にとって行動選択が食う・追う・遊ぶの3つしかないみえない物よりも、矢鱈と思考回路が複雑で面倒くさい女の子の方が厄介かつ最も念頭に置くべきものであった。寮生な上に指定された時間が夕食も終わった9時である時点で用事がある等と言った言い訳の上等文句は一切使えない。ゆえに、濁した言葉の行く末はとうに決まっていた。



「行こう、かな」



































草木も眠る丑三つ時・・・が本当は理想的だったのだと委員長は語る。そこらかしこから放たれる視線と陰口の暴力に耐えながらも、凛久は説明を聞いた。4人ペアでビニールを張り付けた懐中電灯1本の明かりを頼りにこの学校にある七不思議の場所をすべて巡り、それぞれの場所の名前が書かれたメモ紙をすべて揃えて持ってくると言うルールだ。
外に明るい建物があるわけでもないこの学校を照らすものは少々強めの月明かりのみ。面白そうじゃねぇかと笑う男子生徒を見て、とんでもない鋼の心臓だなぁと凛久は心底思った。



因みに七不思議というのは
1つ。音楽室のピアノを一人で弾くと別の楽器が勝手になり始める。その音楽が止まるまでピアノを弾き続けないと音楽室から出られない
2つ。図書館の本はたまにごっそり消えることが気にしてはいけない。無理に探そうとしたり帰ってきた本に悪戯をしたりすると数日後に怪我をする
3つ。保健室で「お医者様けが人です」と3回言うと白衣を着た人がメスをもって襲い掛かってくる。この土地には昔病院が建っていたらしい
4つ。理科室でかくれんぼをするといつの間にか人数が増えていることがある。増えた人を断定せずにその人に鬼を任せると見つかった人はガスバーナーで焼かれる
5つ。冬のプールを覗き込んだままずっと動かないでいると、女の人が出てきて水の中に引き込まれる。「探して、探して」と聞こえるあたり、何かを探しているらしい
6つ。渡り廊下をぐるぐる歩き続けていると、どこからもがき苦しむような声と助けを求める声が聞こえる。病院の患者が未だにさまよっているという噂だ。
7つ。校舎裏の壊れかけのお堂に悪戯すると呪われる。詳しいことは何一つ分かっていない。何が祭られているのかさえ、この学校の人は知らない。



ほぼ学校1周と言っても過言ではない過酷な肝試しに、隠れて本当にこっそりため息をついた。この中で凛久は数人正体を見たことがある。故に予想だと4つ目と5つ目は出てこないはずだ。



「いやはや、人の子とは慎重、慎重という言葉を知らぬようですな・・・」

「ごめんなさい陳宮さん・・・付き合わせてしまって」

「人の子、何より、何より女子の繋がりというのは殊に肝心、要らぬ軋轢は面倒事を呼びます。故に心配はすれど怒りはいたしませぬ。・・・・それにしてもあの男は、このような時こそ護衛が必要でしょうに」



あの男、もとい法正は肝試しの話を聞くと何かを思案するような顔をした後何も言わずに出て行ってしまった。最近、微妙に法正の様子が違う事に、凛久は少し、頭を悩ませていた。法正の前で泣いてしまった時と、陳宮と接触した時。それぞれ、どこか、何かが違っていた。まぁ陳宮といるときは漏れなく超がつくほどの不機嫌なのだが





ペアになったのは女の子が2人と男の子が1人。何と委員長である。貧乏くじにも程がある









さて、お願いですから怒ったりしないでくださいね・・・・




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胡麻の学校には怖い話とか1個しかなかったので少々不謹慎ながらも羨ましいような気分です。この話書くのに学校の怪談とぬーべーを見ました。真夜中だったので眠れなくなりました。


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