「さて、紹介が遅れましたが私は陸伯言、陸遜とお呼びください
そしてこちらが凌統殿、そしてこちらが」

「甘興覇、鈴の甘寧たァ俺のことよ!」



法正の監視付きを承諾しての初コンタクトは、人気がゼロの校舎の裏手、凛久と法正が初めて会ったあの場所で行われた。
どこぞの渓谷のごとく深いため息ののちに法正から米神を拳骨でドリルされるアレをくらった凛久はもう逃げ出したくて仕方なかったのだが、ここで逃げれば確実に悪化というトゥルーバッドエンドを意地でも回避すべくこの場にはせ参じた次第である。大体いなかった法正が悪いのではないかと攻めたかった凛久だが、これ以上怒らせるわけにはいかないと口を閉じた。



「で、孫家の方々が何の用で? 貴方方の守るべき人はこの学校にはいないと把握していたのですが」

「おやまぁよくお気づきで、流石とでも言っておきましょうかねぇ」



ソンケ、とは何か。聞く前に「法力や道術などに秀でた家門ですよ。この3人はおそらくそこの式でしょう」と説明してくれた。ん? ソン? 損・・・尊・・・村・・・・







「あの、法正さん・・・・ソンって・・・その、マゴっていう字ですか」





瞬間、眉間の皺が濃くなった。「なぜ知っている」と何時にない低音の言葉は、凛久のただでさえズタボロの精神をロードローラーで丹念にひき潰していく。泣きたかった。いや、凛久の涙腺が人並みであったならもうとっくに滝のような涙を流していたところだろう。ひきつった喉で何とか話そうと息を吸う。



「ち、ちっちゃいころにおおお世話になった神社の、神主さんがですね、孫さんって言いまして・・・・5年生のころに家の都合で引っ越してからはあんまり会ってなくて、法正さんに話すことでもないなって、」

「神主、まぁおそらくその神主も孫家の人間でしょう・・・ちなみに下の名は聞いたことがありますか?」

「堅、さん? でし・・・ヒィッ」



神主さんは法正さんの親でも殺したのか。そう思うくらいには法正の目はヤバかった。「なるほど、それで殿は・・・」と呟く陸遜は、凛久の意識の外だ。



「取り込み中悪いけど、こっちもいろいろあって忙しいんだ。話だけでも聞いてくれるかい」

「そうですね・・・凛久殿、単刀直入に言います。私たちに力を貸してください!」

「無理です。さぁ行きますよ凛久殿」

「アンタに聞いてねェっつの!!」



ラリアットの形で凛久を引っ掴んで去ろうとする法正を甘寧が止める。こけそうになった身体を何とか支えて、3人に向き直った。
要求の際に下げた頭を元に戻さないままの陸遜、去ろうとする法正と凛久を止めるべく大声を張り上げた甘寧、苦虫を噛み潰したような表情で事を見る凌統、




「ご、めんなさい、法正さん・・・話聞くって、言っちゃったもんで」

「正気を疑いますよ」

「ごめんなさい・・・
えっと、陸遜さん、何で私に頼むのかとか・・・聞いてもいいですか」













「一度貧血になるまで飲み干してやりましょうか」耳元で呟かれた言葉に、凛久はただ謝るしかなかった。



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