俺の笑い声にびっくりしたのか、彼女は驚いたようにまん丸な瞳をして俺を見ている。けれど、すぐにいつものように掃除を始めた。
後で阿伏兎に聞いたところ、彼女は俺のお世話係らしい。掃除をしてくれる女の子だという認識しかなかったので、驚いた半面少し嬉しかった。さっそく呼びつけてみようかな。





団長とお世話係
第二話





彼女は不思議そうな顔をして部屋を訪れた。

「あ、来た来た」
「…失礼します」

少しだけ首を傾げて俺を見ている。

「君さ、俺のお世話係なんだってね」
「そうですよ」

ソファに座るように促せば、少しだけ眉をひそめたものの言われた通りソファに座った。ちょこんという効果音がよく似合いそうな感じだった。

「何か困りごとですか?」
「ん?いや」
「え?じゃあ、用って何ですか?」
「名前教えて」
「え?」

彼女の瞳が少し見開かれ、

「…奏せいです」
「ああ、地球人なの?」
「そうです」
「俺ね、神威っていうんだ」
「…知ってますよ?」
「そう?」
「自分がお世話する人の名前くらい知ってます」
「はは、そうなの。俺は君の名前知らなかったのに」
「…ははは」

一応名乗ったはずなんだけどなぁと彼女は呟く。

「ねぇねぇせい」
「なんですか?」
「これから仲良くしてよね」

目の前に不思議そうなせいの顔。それがふわりと笑みに変わった時、なんだかすごく得した気分になった。埋もれていた宝物を見つけたような。

「…なんで急に?」

笑顔のまま彼女が尋ねる。俺は少し考えて、

「なんか、気にいっちゃった」

そう言うと、

「ほんと、気まぐれですね」
「そ?俺って気まぐれかな」
「はい」
「ふーん、知らなかった」
「まぁ、飽きたらいつでも言って下さい」
「なにそれ」
「そのままの意味ですよ」

おっとりとした響き。ゆっくりな口調。確かにすぐ飽きるかもしれない、とその時は何となしに思った。でもきっと、暫くの暇つぶしにはなる。面倒な女でもなさそうだし。

「ひとつアドバイスをあげよっか」
「なんですか?」
「Gを相手にする時はGジェット使った方がいいよ」

言ってGジェットを見せると、

「あ!なんであの時ソレ使わなかったんですか?」

びっくりしたように声をあげる。

「スリッパで退治する姿が面白かったから」

当然の答えである。





20111013

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