オレンジに色づいたご飯。その中にグリーンピースとニンジンと玉ねぎがキラキラ光る。みるみると美味しそうに色づいていく。それをふわっふわの卵が包み込んで、

「できたよ」

団長はわたしの前に美味しそうなオムライスを差し出した。

「うわぁ…お金出して食べるのみたい」

言ったら団長はおかしそうにくすくす笑ってた。





団長とお世話係
最終話





せいはとても嬉しそうにオムライスにケチャップをかける。俺は自分の分を作り始めた。

「食べていいですか?」
「いいよ」
「いただきます」

パチンと手を合わせて響く声。

「どーぞ」

せいが一口オムライスを食べ、

「〜〜〜っ!!」

目を輝かす。反応に満足して、俺はフライパンに向き直った。

「美味しいです!」
「良かった良かった」

オムライスはどんどん消費されていった。気持ちいいほどにパクパクと食べられていく。俺は自分の分を作り終わるとせいの前へ座った。

「いただきます」

一口ぱくり。しかしやはり、せいの作るものには敵わない気がする。うーん、今度オムライス作らせてみようかな。美味しそうに食べているせいを見つめながら考えた。

「ごちそうさまでした」

やがて食べ終えたせいは笑顔でそう言う。

「今度せいもオムライス作ってよ」
「うーん…卵やぶれちゃうんです」
「それでもいいからさ」
「…分かりました」

今はこのくらいの距離でいいのかもしれないと考える。まだ、こんなやり取りでも満たされている気がする。

「せい」
「何ですか?」
「さっきの話だけどさ」
「はい」
「本当に、俺が飽きるまではここにいてくれるかい?」
「ふふ、いいですよ」

歌うみたいに紡がれる言葉。そこには甘さも苦さもなく、ただ楽しそうに微笑むせいがいる。どんなふうに言ったら伝わるだろう。

「うーん、けっこう真剣に言ってるんだけどなぁ」
「真剣?」
「まぁいっか、でも後悔しても知らないよ?」
「後悔?」
「今自分が言ったこと、後悔しても知らないからね」

小首を傾げる彼女に笑いかける。
ほんとに知らないよ?
飽きてなんてあげないよ?
あの時は冗談だと思ったの、なんて言い訳、聞き入れてあげないからね。

「うん、今はいいや」

いつか、こんなふうに冗談では流せなくなるくらいに、彼女の心をこっちへ持ち去ってしまえばいいだけの話だ。

「これからもよろしく頼むよ」
「…こちらこそ」

まだ、よく分かっていない顔のまま、彼女が頷く。

「うん、いい子」

頭を撫でようと手を伸ばした時、

カサ…

黒い影。

「は!」

せいが勢いよく立ち上がる。
俺もすぐに行動する。

「せいスリッパ」

ぽいっと投げてやれば

「装着!」

彼女の右手にすっぱりはまる。

「はは」

いずれ、埃をかぶったGジェットを見て笑い合う日がくる。やっぱスリッパが最強だよねって笑い合える日がきたら、その時にもう一度伝えてみることにしよう。





完 

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