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「まず、美恵さんがなぜ並木団地で一人暮らししているか…なんだけれど」


そう口火を切り、ミサさんはゆっくりと少し迷うように話していく。


「美恵さんはね、若い頃お母さんを…その、亡くされてね。
元々、両親が離婚してしまって…お母さん側についてね、お母さんと弟さんと二人で団地暮らししてらっしゃったのよ…。それからお母さんも亡くなって、弟さんと二人住まい。でもその後弟さんも亡くなって…そのお母さんが近くの老人ホーム"ふるさと"に通われていたの。
前から住んでいる家だし、故郷だから…って一人暮らしを続けているようなのよ」


「そうだったんですか…」


私たちはミサさんにお礼をし、図書館を去ったのだった。


・・・


それから、美恵さんの身辺について少し調べた。
が有力な情報が得られず、一度ほどあずま荘に戻ったのだった。


「ねぇ瑠々、私少し調べたいことがあるのだけど…」


ごく小さな声で菜々は提案した。


そして、"ふるさと"にもう一度行きたいとも。


・・・


「あのね、安西さんの生い立ちについてなの」


あずま荘を出、菜々が口を開いた。


「安西さんの生い立ち?」


「ええ。
偶然だと思うけれど安西さんはお姉さん、美恵さんは弟さんを失っているの。
一瞬兄弟なのかと思ったわ、年齢もそう離れていないし。
けれど真理さんの話からすれば安西さんのお母さんはまだ生きている、けれど美恵さんのお母さんは生きていない…とすれば赤の他人よね」


「そうだと思うけど」


「何だか、似すぎていて少し調べたくなったのよ」


もしかしたら、事件になにか関係しているかも…と菜々は言った。


・・・


"ふるさと"に着き、最初にしたことは靴を見ることだ。


安西さんの靴だけが常人じゃ手の出せない、高い靴で更にはシークレットシューズだった。


それから真理さんを呼んだ。


真理さんは、割とすんなりと安西さんについて話してくれた。


「安西勉さんは、低身長でね。お姉さんが亡くなって鬱みたいになっちゃって、"ふるさと"で世話を頼みたいってお母さんが言いにきたのよ、その所為で結婚も出来ないみたいでってところまでは言ったわよね?」


「はい、その次からお願いします」


「分かったわ。
安西さんはお姉さんを中学生の時に亡くしているの。
お姉さんの名前は安西真奈さん、安西さんと同じで身長も高くなかったみたいよ。
ふわふわした髪の近所で評判の可愛い子だったって聞いたわ。
で、お姉さんの亡くなった分とお父さんの亡くなった分の生命保険がおりて生活には困らないとも言っていたわ…元々裕福だったらしいし。
それで…高校生の頃引きこもりになってしまって、大学生で鬱に…。
その頃から白髪が出ちゃったって言ってたわ」


「白髪?」


「ええ、今は染めてるみたいだけど…。
ストレスで生えてしまったみたいね。
結婚願望あるみたいだし、白髪じゃかっこわるいって」


若い人に白髪とは、盲点だった。
更には染めているとなると…。


真理さんの話で、ぱちりとピースが組み合わさった気がした。


安西さんの着ていた"黒い服"。
裕福な家庭に生命保険が降りたことによるであろう"高い靴"。
お姉さんが死んでしまいストレスからきた"白髪"。


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