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美恵さん宅を出るなり早々に菜々が口を開いた。


「ねぇ瑠々、まずは例の老人ホームで怪しい人物を見たものがいないか、聞き込み調査をしない?」


菜々の提案にそうね、と頷き、老人ホーム"ふるさと"へと歩を進める私達だった。





「怪しい方?
いえ、見かけませんよ」


これが"ふるさと"の職員の回答のデフォルトだ。


"ふるさと"にいる職員は5人ほど、老人は7人。
ほぼ1対1でやっている状態である。


今の時間帯―5時過ぎは、6時きっかりの夕食の為職員総出で料理を作る。
その間だけ老人たちは歌を歌い過ごす、と言う。
そんな中に一人だけ、正確には職員にまだ数えられていない、研修生がいた。


朝倉真理、彼女は5人とは少し違った回答をしていた。


怪しい者は見なかった。が、いつも定刻に通る人物がいる、と言うのだ。
それも、5人ほど。


その回答に、犯人はいるだろう。と事件真相に近づいた喜びを噛み締め話を聞く。


「5人のうち2人は、この老人ホームの方です。三原さんと安西さん」


真理さんがそう言い、指差した人物は1人はいかにもお爺さんだったが、もう1人はまだ30前半といった具合だった。


「62歳のお爺ちゃんが三原さん。結構体格いいでしょう?テニスが趣味なの。でも長くはもたないの、膝が悪くてね…今ここでリハビリもかねて来てもらってるの。
32歳の"ふるさと"一の若手が安西さん。安西さん、低身長でね。お姉さんが亡くなって鬱みたいになっちゃって、"ふるさと"で世話を頼みたいってお母さんが言いにきたのよ、その所為で結婚も出来ないみたいでね…」


現に安西さんはぼうっと空を見つめ、一人ぽつんと椅子に座っている。


「それから、あと…40代くらいのサラリーマンの男性と、朝早くと夜遅くに犬の散歩をする50代の女性、それから20代のOL。この道通る人も少ないしそれくらいじゃないかしら、不定期の人もいるけれど」


恐らく、20代のOLというのは美恵さんのことだろう。


「なぜ、そこまで把握しているんですか?」


つい、気になり質問を投げかけた。失礼に当たらないだろうか…。
でも仮に失礼だったら菜々が私を小突くはずだ。


「私、老人ホームに研修生として派遣されてから、ちょっとした動きとかにも気を配るようになってね。…それでおのずと人間観察に走ってるわけ」


少し困った風に苦く笑う真理さん。


「…そうですか。
ありがとうございました」


菜々の礼に続き私も慌てて礼をし、"ふるさと"を後にする私達なのだった。


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