[ 2/11 ]


翌日。


早速美恵さん宅へ向かえば、少し不安そうな顔でしかし家の外できょろきょろしながら我々を待ってくれていた。


美恵さんは、ストーカーの被害を受けているというだけあり、綺麗な人だった。
いや、綺麗というよりは可愛いという表現の方が合っているかもしれない。
彼女は150cm少しくらいの身長と随分小柄で、童顔でパッチリした目にふわふわした茶がかった黒髪という容姿をしていた。


「一ヶ月前です、気づいたのは」


美恵さんは私達に確認を取ってから紅茶を出してくれた。菜々の話だと、ダージリンという種類の紅茶らしい。

彼女はお茶を出し、それから席に着くと早々に話の口火を切った。


「そこの老人ホームを過ぎた辺りです」


美恵さんが指差す先には"ふるさと"という名の老人ホームがあった。
比較的規模としては小さな老人ホームで、美恵さん宅からは目と鼻の先の距離だ。


「…老人ホームですか?なぜそこでお気づきに?」


「恐らく、老人ホームの木の枝だったんだと思います。
よく伸びた白い花のエゴの木という木があるんですが、パキって音がしたんです。電柱の後ろ辺りでした。誰かがサッと隠れたのも見えました。
それから、気配がする日は殆ど振り返りました…時々、服や靴が見えました」


「…木の枝。
それまでは気づきませんでしたか?」


「はい」


「では、時間帯や犯人の特徴は分かりますか?」


「ええ。
時間帯は10時過ぎです。
私、パソコン関係の事務をしていまして基本帰宅する時刻が同じなのです。
並浜鉄道の仕事場のある緑駅から私の降りる終点駅並木駅まで約10分、
仕事は10時前に終わらせるので大体並木駅に着いた時点で10時くらいだと思います。並木駅から家まで徒歩4、5分かかります」


「では、10時5分〜10分くらい…という時間帯ですね?」


「はい。
それから…特徴ですが、黒っぽい服でした。それから…靴、そうです高そうな靴でした」


「身長や年齢は分かりますか?」


「…悪くない体格をしていました。
でも身長はあまり高くはなかったと思います。私と変わりません。
あと…髪が、白髪交じりでした。部屋に急いで入って、そっと外を覗いたら見えました…老人ホームの方へ走っていってしまいましたが」


「白髪交じりですか。では、4、50代と見て間違えないでしょうね…。それに老人ホームの方へ行ったということは…来た道を戻った、ということですか。
どの家に入ったかは見ていましたか?」


「いいえ、こちらを振り返ったんです。
驚いて、急いでカーテンを閉めました。昨日のことです、それで怖くなって探偵事務所の方にお電話をかけました」


「そうですか…。
それから、警察には相談されました?」


「はい。
けれど、幾ら言おうと証拠がないものですから…警察は、あの連続放火を追いかけているらしくて、対応してくれないんです」


あのと美恵さんが称した連続放火とは、今巷を騒がせている事件だ。
並浜鉄道の、出発点である浜海市で三ヶ月ほど前に起こった事件。今月も一つ住宅をやられ、既に6件目。
ひと月に3件のペースでやられている。


「分かりました、出来る限りはやってみます。
また何かあれば、遠慮なくかけてください。
事件は解け次第、ご連絡します。必ずや解決してみせますので」


小さく頭を下げる、私も続ける。
ありがとうございます、と解決してもいない事件に対し礼をする美恵さんに私達は絶対に謎を解かなくては、と決意を固めた。


/



「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -