ひばりいじり5


**

彼の声がいつも通りに低く、しかし微かに掠れていて、ツナの鼓膜を心地よく震わせる。
女を知らない様子の雲雀が無垢とは程遠い仕草で自分を誘うのは、ベッドでの痴戯が原因か。

報復はそれなりに受けてやるべきかなと無抵抗でベッドに押し倒されてあげたが、暴力はなく、甘美なお誘いまでされてツナには、乗らない理由がなかった。

(ひばりさんは俺の一番好きないきもの)

「く、?」
ツナは柔らかい耳朶を甘く噛んだ。

「じゃあ、これは俺の一番好きな耳たぶ」

雲雀の手首には、ロープの食い込み痕がくっきり残っている。
そこには熱い舌を這わせ、雲雀が気を取られているうちに、しゅるんと太ももの間に手を忍ばせた。

「あ」
またもやツナの手の内に捕らえられた雲雀の雄の証。
雲雀の眉が少し寄せられて、くちびるを噛んでいる。

「ひばりさんはココ、触られるの、好き?」
「だったらどうなの、男なら誰だって…っア!あひ、ァ…」

おっとりした質問に返そうとした冷静な言葉が突如、淫らな喘ぎに変わる。

「は、やい、はやいよ、ゆびっ」
「さっきの記録を塗り替えましょ、」

性器を上下に素早くしごき、滲み出る先走りを先端の小さな穴に塗り込める。
もちろんストップウォッチはもうないが、雲雀は早くも昇天寸前で、ツナの指技に圧倒されていた。
数分すら保ちそうにないのは明白だ。

「お、おしり、も、」
溢れそうなくらい雫を目に溜めて、雲雀が膝を開く。

「お尻?」

**

(さっきみたいに僕のお尻、酷くして)
くちには出さず、雲雀は目で訴えた。

「お尻、そんなに気持ち良かったんですか?」

小さななりで、沢田はなかなかの力持ちだ。
雲雀のからだをうつ伏せに転がし、尻を持ち上げて四つん這いの姿勢を取らせてきたが、大して力を使っているようには見えない。

「桃みたい」
かぷっと。
キズひとつない丸みに沢田の歯形が残される。

雲雀の望み通りに荒々しく揉みしだかれる尻肉。
しろい指で、シーツを握る。

「ぅンっ、ン」
ズブリと菊門に、指が突き刺さる。
肉壁を掻き分けるそれに痛みはない。
痛くないどころか、待ちわびた異物感に全身がぞわぞわしだした。

形容しがたい、息苦しさに似た快楽。
たまらない。

(クセになりそう、だよ)

「ぁあっ、指…、…イイよ…これ、もっとして……」

悦びにわななく雲雀に、沢田が妖しく囁く。

「指より気持ちいいの、挿してもい、ですか?」

(指より気持ちイイ?それ、なに)

「どうせ、僕の意見なんてきみに聞く気ないんでしょ……するんなら、早く。僕を愉しませてよ」

(違う、プライドを棄てたわけじゃない。僕は、僕の思うようにしたいんだ)

**

粘着質な水音はそれだけで2人の欲を煽っていた。
ベッドに上体を這い蹲らせてツナを振り向く雲雀に、一層高ぶってしまう。

尻の丸みの向こうに見える彼のふしだらな美貌。
(まず、この角度からひばりさんの顔を見るの自体、超レアだよな)

「前、向いててくださいよ…恥ずかしいなぁ…」
猛る雄をジッパーの隙間から取り出すさまを見守られるツナが言うと、はふはふ息を荒げてるクセに鼻で笑った。

「ひとのコト、こんなにした分際で何馬鹿言ってんの?咬み殺すよ?」

(ひばりさんの支離滅裂なところも好きです…)
膝をガクガクさせ、菊門をもの欲しげに蠢かせていても高飛車な物言いを忘れない雲雀の精神にツナは憧れを禁じ得ない。

「ん、ぁ、ウぅ…へんたい、」
「へへへ…」

雲雀の尻の谷間に熱い肉茎を挟みこませて、ツナは腰を揺すった。
右手を前に回し、彼の自身をもやんわり弄る。

じわじわせり上がる快楽。
敏感な谷間を擦られて、雲雀が啜り泣いている。
よく自分の雄の感触を味あわせてから、ツナは先端をゆるんだ蕾に押し当てた。

(そんなあなたをいよいよ、いただきます!)

心の中で決意をあらたにした時、
(俺ってどこまで変態になれるんだろ、)
と思わないでもなかった。

**

(む、無理、はいらないっ)

「さわ だ、っア…ダメ」
「ダメじゃないです」
「は、入らないで 待ってよ…くァっ!?」

皺だらけの淫門に、沢田の欲が無理矢理の侵入を試みている。
ゆるんでいるとは言え、指なんかと比べ物にならない圧迫感。
悔しいが沢田の持ち物は雲雀よりも立派で、そう簡単に入りはしない。
じぶじぶと時間をかけて、胎内を貫かれる。

「は あ…」
(こんなものを僕に挿れるなんて。 沢田綱吉…!)

それでも痛みだけではない何かに、あたまがグルグル混乱した。

「アハ…ほら、入った…ひばりさんの中、キチキチです、苦し……」
うなじに沢田の息がかかる。
相変わらずの高い声なのに、どこか雄の凄みを帯びたそれに雲雀の胎内はきゅ、と反応してしまった。

「動いても、い、ですか?」

(なにも聞くな、僕、声…だせないよ)

息をするのもままならない雲雀は目尻から数滴の雫を落としながら、一度だけ頷いた。
**

セックスとスポーツはちょっと似てると思う。

荒れる息に、飛び散る汗。
(俺がスポーツに一生懸命になったことなんか無いけどさ)
山本を応援しに試合を見に行く時も興奮するし、ドキドキするけれど、それは単に親友である山本の活躍と勝利が嬉しいのがほとんどだ。

(スポーツは、こんな気持ちヨく、ないよな)
必死に腰を動かしツナはいろんな事に思いを巡らせていた。

(好き。最高、ひばりさんの中に締め付けられるの)

(大好き…、ひばりさん)
そう言う気持ちでツナのあたまと胸がいっぱいになるところがエッチとスポーツとの相違点だ。

「は、ッ…ああ、ふっ…」
ツナが繰り出す突きに、雲雀は背中を反らして首を打ち振る。**

「なん、で……、気持ち イ…!」
腰を捕まえる指が雲雀の尻に食い込む。
しっかり固定して、奥深くの雲雀の弱点を意識して挿入すると、狙い違わずソコを掠めたらしい。

「ああっ」
四つん這いにもなってられず、雲雀の上半身が潰れる。

見下ろす背中と、ツナの耳に届くくぐもった悦声――かつての支配者の突っ伏した様にツナは唾を呑んだ。

(ヤバいかも)
征服欲が、更にツナの動きを神がかり的に速める。

雲雀の背中に後ろから覆い被さり律動するも自分が華奢なせいでどうにも格好がついてない気がするが、その劣等感にはそっと蓋をした。

今は、忙しい。

**
シーツに顔を埋め、尻を持ち上げた状態でむせび鳴く。

菊門の中で脈打つ沢田の自身を実感し、雲雀はただただ抑えられない声をあげ続けていた。

「ヒッ…、沢だ つなよ、し、ソコ、もっとソコ…!」
その媚態が沢田の攻撃力を何倍にもしているのも知らず、雲雀は仰ぎ見て沢田を誘った。

「あ そう!ソコ、だよ…、あああ…ッ、」

胎内のしこりを奴の雄で責め立てられると意識が飛ぶほどの快楽が襲いかかってくる。

ぐりゅ、と秘所の奥までくる性器はすぐさま菊門の出口まで引き抜かれ、再度、雲雀を貫いてしまう。
それの繰り返しだ。
なんとも単純な動きなのに、ひどく淫猥で、屈辱的で。

(今のぼく、雌犬みたいだ)

ベッドに四つん這いにさせられ、惨めな体勢で背後から尻を貫かれている構図に、淫心を刺激されるのも確か。

被虐に酔う雲雀に、沢田は息を切らし言った。

「なんか、俺たち動物っぽいですね!」

「ひばりさんと交尾してるって、……萌えます」

(交尾)

小動物に乗っかられ交尾に励んでいるのだと実感すると、燃え立つ興奮をどうにもコントロール出来なくなった。

(そんなの、ダメだよ、僕)

(おかしくなる…………)

**

ぎゅうッと。
雲雀からの締め上げが一段激しさを増した。

(あ、スゴ…)
搾り取られる快感とは正しくこの事だ。

「も、おれ らめれすっイキます、」
「あ…まだ、まだ……」

黒髪を振り乱し雲雀が、イヤイヤと首を振る。
構わずツナはラストスパートをかけた。
押し揉むように雲雀の蕾を犯す。

「やだ!やっ…!?」

小さな体躯から想像できない怒涛の勢いに、雲雀が掠れた悲鳴をあげた。

「ホントだめ、出ます、出ます!」
「やァッもっと…ゆっくり、まだ、シなよ…!」

雲雀も辛そうだが快楽の極みに行くまでを今しばらく味わっていたいのだろうか。
焦らされるのがココまで好きだとたいしたものだ。

「うぁ?!」
が、先に達したのは雲雀だった。
「あんッ あン、ぁ…」

気持ちよさそうにシーツに淫らな体液をこぼす雲雀。

(えっろい!この人えっろいよ!!)
ビクンビクンとからだを痙攣させて熱を解放する雲雀に合わせツナを包み込む肉壁も引きつる。
ギュンと先端が熱くなって、次の瞬間、うねる胎内にツナも白濁を噴き出した。

「んぅ!!」
「あ…さわだ…」
ツナの呻きに、雲雀の肩が揺れた。
**

(この子、一体いつまで……しつこい)

後から後から、沢田の欲が注ぎ込まれる。
熱いものが腹にせり上がり、雲雀はからだの最奥まで汚される恐怖と歓喜を同時に感じていた。

「っ、は、はぁ」
がつがつ、もう出ないか確かめるように数度、腰を打ち付ける沢田。

「はぁ…ありがとうございました……」

(ひどい、僕の中に一滴残らず全部注ぐなんて…こいつ、最低だ、ムカつくよ)
そう思おうと自分を叱咤するが、こころもからだも全て沢田にとろかされてしまって、悪態もつけないし指一本動かせはしない。

「あぅ…」
ちゅぽっと抜けた沢田自身、自分に挿さっていたモノを見たくて、目で追った。

(僕、…おかしいな……)

**




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