ひばりいじり4



雲雀の後孔の中は、胎内に受け入れたツナの指をきうきう締め付ける。
肉壁を広げるように指を回せば不規則な収縮を繰り返した。

「は、……っ、は、はぁ」

最悪、彼はそう言ったくせに時折あげる艶めいた喘ぎをもう堪えようとはしていない。

「あンっ、…」
「ひばりさんのお尻の中、あっつい」
「ね…ねぇ、きみの言う、実験って…最後までするのかい?」
「最後までって?」
「………」

問い返せば、きゅ、と細い眉をひそめて雲雀は黙った。

(ひばりさん黙っちゃった)

上の口は寡黙だが、下の口は随分ツナの指をお気に召したようだ。
抜こうとすると逃がすまいと締めてきて、力強く押し込むと嬉しそうに指を迎え入れてくれる。
三本に増やした指先で菊門を攻めると、深く浅くのリズムに合わせて雲雀の膝から下がポンと跳ねるのが何とも楽しい。

「ッ!? ひ…なに、ア そこ、」

それは突然、訪れた。
ぐりゅんと指先を曲げて内壁を爪で引っ掻くと、雲雀がびくんとからだを痙攣させたのだ。

「痛い?」
ぴく、指を止めて雲雀の顔をうかがってツナは息をのんだ。

**

「いま、の、な…に?きみ なに、したの…?」

性器に触れられたわけでもないのに、びりりと走った痺れに似た快感。
四肢が大きく跳ねた。

沢田は雲雀の不安げな問いに、ほう…、と頷く。
いかにも納得した、とういう風だが生憎、雲雀の中ではなにも納得出来ていない。

だから、
「俺、ひばりさんの気持ちいいトコ、発見したようです」

そう言われても、なんの危機感も覚えなかったのは、仕方のないことだ。

「ここ?ここだっけ?」
「あ あああ、あッ?!」
「あ、ここですね」

沢田が内部に侵入させた指を大胆に動かし、雲雀の反応を見て確かめる。
もう睨むことも平静を演じることも、ままならない。

先ほど発見したと言ったその場所を幾度も擦られて、赤いくちびるが意味のない声音を紡ぐ。

「やだ やだ!」

あられもない悲鳴をあげイヤだと訴えたが、実験中の沢田綱吉は、容赦ない。
『ココかぁ、ココって何センチくらい奥なんだろ?』と独り言を言いつつ、そこばかりを苛めてくる。

**

最後の仕上げ。
前立腺、というのを調べていたら、予想外の事態が発生した。

(かわいい…っていうか、すげーエッチな声)

初対面でボコボコに殴られたあの衝撃の出会いを経て、この保健室での実験。
横暴かつ冷徹だった先輩には、その面影はなくなっている。

(ここって、そんなにまで感じるトコなのかな)
腿のあいだの性器を見れば、いまだ変わらず勃起しきっていた。

草食動物代表の己の手で尻を拓かれ、菊門を辱められて、よがり狂うさまは、まさしく雌の獣。
胎内のシコリを指の腹で擦りあげると、雲雀の汗ばんだ肢体は大袈裟に反り返り、たまらない、と言わんばかりに身悶えする。

(ギャップっていうのかな、ストイックなひばりさんが淫らに鳴くって……萌えるんですけど…!)

「いっ、イぁ だめだよ、僕…僕イく…イく、」
「またイくの、ひばりさん?」
「ちがッ……あっあ ダメ イきたく、ない…!さわ、だっ」
「はいッ何ですか!?」

なにを堪えているのか不明だが、本人は絶頂を拒否している。

ツナが何事かと耳を近づけたら、その赤いくちびるは。
「し、」


「死、ねぇえ…………っ」

と怨念めいた言葉を吐き出した。

「ぁん、あ、ああー!!」

白濁を吐き出したのは数秒も経たないうち。
ツナは、雲雀の吐精の瞬間をバッチリ動画におさめ、メモ帳にまた一つ、記した。

『雲雀さんは、うしろだけでイケる才能の持ち主』

**

(あたまが、ぐらぐらする……ああ、僕……)

またしても沢田などの前で、欲を放ってしまった。
イきたくない、頭の冷静な部分で思っていても我慢できなかった。
沢田に対して自分が何か口走った気もするがあまりはっきり思い出せない。

その沢田は、雲雀の足の間で何かを懸命にメモしている。

(さっきの何だったのかな)

達するまでそこを犯していた指がなくなり、喪失感に蕾がざわめいている。
からだの内部からじかに与えられる快楽。
思い出すだけで、じくじくと皮膚の奥から熱が這い出る。

「まだ、かたい」
「!?」

つん、と先端を爪先でおさえ、沢田が笑う。
「ん……」

片手には携帯電話。
液晶画面を雲雀に向け、沢田は再生ボタンを押した。


『いっ、イぁ だめだよ、僕…僕イく…イく、』
『またイくの、ひばりさん?』
『ちがッ……あっあ ダメ イきたく、ない…!さわ、だっ』
『はいッ何ですか!?』

『し、』

『死、ねぇえ…………っ』

『ぁん、あ、ああー!!』

「ね、今の携帯電話って、動画も綺麗に撮れますよね」

撮られたばかりの、恐ろしい動画。
指で犯され、精液を放つ己自身の痴態を見せつけられ、雲雀は震えていた。
聞くに堪えない淫猥な喘ぎ声はまさしく、雲雀自身の声。


(こんなもの撮られて…どうしよう。僕の、こんな、こんな恥ずかしいところ…)

**

動画を見せられて、儚げに身をふるふるさせている雲雀は草食動物に弱みを握られた屈辱にふるえているのだとツナは思っていた。
しかし、それは違ったようだ。

「そ…それ、どうするつもりだい?その映像を群れの仲間に流して、僕を貶めでもするのかい……?」

頬を桃色に染め、どこか甘い息遣いでそう言った雲雀は、膝小僧同士をもじもじ擦り合わせ始めていた。

(……あれ?)

「ねぇ…、沢田綱吉、やめてよ。なんでもするから、それだけは…」
「ひばりさん」
「なに?」

ツナは、困った顔で、指差した。

「アソコが、また勃ってます」
太ももの間に存在する雲雀の雄が、三度ぴくぴくしながらピョコンと勃起している。

**

「……だから何?」
「なにって、」

きっと、この変態のことだから撮った動画を脅しのネタに使うのだろう。
間違いない。
卑劣な行いに対する怒りと、沢田綱吉が一体どんな加虐的な行動をとるのか、期待めいた思いに、雲雀は総毛立っていた。

せめて、凛としていなければと強気に出ると、沢田は予想を裏切って、苦笑しているのだ。
雲雀の菊門はいまだに疼いて仕様がないと言うのに。

「これだけ資料があれば、充分だと思うんですよね……」

(何言ってんの?何言ってんの、こいつ)

沢田がストップウォッチと携帯電話を鞄にしまい込むのを目にし、苛立ちと焦りが芽生えた。
(まさか、まさか、沢田綱吉は……)
沢田のどこか冷めたような小さな背中。
雲雀の予感は的中した。


「実験はこれで終わりですよ、ひばりさん」
尻を火照らせたままの雲雀に、沢田はこの場に全くそぐわない子どもの笑みをもって応えた。
**

もう既にそれは自覚していたことだった。
これまでの人生、人を叩きのめし従わせて来た、誇り高い自分の、まるで正反対な性癖。

(もっと触って、辱めて)

(僕をおかしくしておいて。許さないよ、途中放棄なんて)

くぱくぱと収縮する入り口は、更なる攻めを求めてるというのに。

「ありがとうございました。勉強になりました」
「わけ、わからない…実験てなんのことなの?」

てっきり、自分に対してのいかがわしい行為を人体実験になぞらえているものと判断していたが、沢田はこう言った。

「理科の、宿題なんです。一番好きな生き物の研究をしてこいって言われて……」

雲雀のあたまの中は、真っ白になってしまった。



**

ベッドの上で、ぱかりと膝の間をあけた雲雀が呆気にとられて自分を見上げる様はどうにも可愛らしく、写メ写メ!と思ったが携帯電話は鞄にしまった後だった。

保健室のベッドは今はあの独特の無機質さを忘れてしまっている。
乱れたシーツ、ところどころにできた染みと乾ききらない体液、と。
ロープで両手を縛られた風紀委員長…。

(このロープをほどいた瞬間、タコ殴りにしようとしてくるんだろうか)

「いちばん…好きな、生物…」
「そうなんです。だから、いっぱいひばりさんの生態の情報が必要だったんです」
「……ふぅん」

ツナの言葉に、雲雀は静かに頷いた。

「沢田綱吉。勤勉なのは結構だけど、好きな生物というのは、人間じゃなくて、動物のことだと思うよ」

「!!!?」

「今きみが収集したデータをよしんばノートに纏めたとしても、そんな卑猥なもの、どんな教師も受け取らない」

「!!!?」

**

琥珀の瞳は不思議そうにぱちくりしていた。
今度馬鹿みたいに呆けるのは沢田の番だった。

(変な子)
先ほど自分をいじくり回していた時は、草食動物独特の、攻撃的には欠けるがジワジワと追い詰めてくる粘着質な攻め――隠された弱い牙、を彷彿とさせたが、今の沢田の様子はまるで、草むらでピョンと跳ねる仔ウサギなのだ。

「よしんば、って、どういう意味ですか…?」
「例えそうであっても、…という意味だよ。さぁ、そんなことより、続きをしなよ」
「つづき?」

このまま、沢田を逃がしてやる気にはどうしても、なれない。
(こいつには、責任がある。この僕を、堕とした責任)

「ベッドでこんな姿にされた僕に、何も感じないわけ?」
「!」


**


やりたい放題しちゃって、ごめんなさい、と口に出しかけて。
ツナは、はたと雲雀の真意に気付いた。
からだを綺麗な薄桃色にして腰を少し浮かせる雲雀はさっきとはどう見ても別人だ。

(生き物の実験、終わったんだけどな)

「ねぇ?」
「俺、別にひばりさんにエッチな事、しにきたんじゃ…」
「ないなんて、今更言えるのかい?このド変態。絵筆で僕の隅々まで悪戯しておいて、よくそんなこと。…!?」
「?……」

雲雀の黒つるばみ色の目がツナの下半身で止まり、ツナも続いて己の股間に視線をおろす。

(あ…そう言えば…俺、ぱんぱん)
さっきまで確かに大興奮していたから無理もないが、ツナのソコは立派に隆起してその存在をベッドのうえの被験体にも知らしめていた。

**


ズボンの膨らみを悟られ、照れ笑いの沢田はおずおずと雲雀の横たわるベッドに戻ってきた。

「違うんです、実験されてるひばりさんがエッチな顔、なさってたので、ちょっとだけ俺も…」
「ほどきなよ」

くだらない言い訳は要らなかった。
勝手に人を弄って大きくしたくせに、人のせいにして。

ようやく腕の自由を手に入れた雲雀は問答無用とばかりに沢田をベッドに引きずり込み、その貧弱な腰を両ももで挟み込んだ。

「あひゃ。…積極的」
コロコロと表情を変える沢田をもう訝しくは思わない。
恥じらいから一転、不敵な笑みに揺れる琥珀を今は触れたいくらいに美しいと感じる。


「シよう」

「制裁を加えるのはその後だよ」

欲望の赴くまま、雲雀は沢田の背中に腕を回した。












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