天使と夢魔の間(ジョアラ)


*下品

*初代












天使と夢魔の間





久しぶりに現れたと思ったらこれだ。

執務室にある自分の席でジョットはほとほと困り果てていた。


「今は……………」

「勘弁してくれ、アラウディ…」


忙しいのだ。
机上に積まれている紙束に目を通している最中だし、考えなければならない事もある。


「聞いているのか、」


聞いていないのだろうな。おまえの事だから。


苦々しげにジョットが下ろした視線は己自身の膝の間に向いている。
そして、そこに彼はいた。

立派なつくりの机の中にすっぽり潜り込んでいる。
元から潜入捜査はお手の物などということは知っているが、仕事以外でも狭い場所に入るのが趣味だなんて。


「…………、おい………」


ああ、見た目だけはまるで天使のようだ。
細かな金の髪と真っ白な肌とアクアブルーの瞳、という極端に色素の薄い容姿をしている。

だが、彼の及んでいる行為というのがその美しさには似つかわしくないものだった。

「……」
ピクリとジョットの眉が動く。

薄い桃色のくちびるからそっと歯がのぞいたかと思うと、ジョットのズボンのファスナーは口だけで器用に下ろされてしまった。

「!!?」

もふっ、と、ジョットの股間に端正な顔が埋もれた。

「…雄のにおいがするよ」

下着ごしとはいえ、直接的な部分に口元を押し付けたままモゴモゴ話すのは止めてほしい。


「もう、良いだろう…」

なるべく平静を保って返すとアラウディは機嫌を悪くすることもなく、きらめく碧の目を細めて微笑む。

やはり、
その顔は天使みたいだ。


「良いわけないだろ。きみのそのスカした顔を恥辱に歪ませるのに最近ハマってるんだから」

こんなことさえ、言い出さない性格ならば。


(別に、スカしてないのに…………)


大きくなり始めた組織のトップに立っていながらも自分を未だに野暮な田舎者と信じて疑わないジョットは、釈然としないままアラウディのしたいようにされている。

「…っんぐ、」

ファスナーの合間に隠れていたソレを引っ張り出され、開始される怒涛の口淫。
指が知らず、椅子の肘掛けに食い込む。


(なんて、なんてはしたない…男同士で……不健康だ、)

あまりの羞恥にジョットの頬が上気した。
みっともない声だけでも堪えようと歯を食いしばる。


血管を浮かべた硬い雄の肌をなぞる温かい舌先。
刀身が熱く脈打ち、咥内にすっかり捕らわれてしまうとその柔らかな締め付けに膝がびくり、びくりと跳ねた。

「…………」

アクアブルーが上目遣いにジョットを盗み見る。
嘲り嗤うような眼差しに背筋がゾクゾクする。

「可愛い」
「…っなにが、」

急所をひたすら責められて熱を吐き出すのはあっという間だ。

「ん!」
ぎゅ、と先端が引き絞られるように熱くなって気がついたら全て吸い尽くされていた。


「………………」

「ごちそうさま」


夢見心地というのとは程遠い、罪悪感と恥ずかしさにジョットは黙って背もたれにからだを預ける。

アラウディの方はといえば、ジョットの欲を音をたてて飲み下した後は素知らぬ顔で口元を拭って立ち上がった。

「はな垂れてる」

興奮しすぎで、鼻水が流れてしまっていたらしい。
アラウディがジョットの真っ赤に染まった顔に、薄紙をそっと擦りつけて母親のように鼻を丁寧に吹いてくると、ジョットは益々カッコがつかなくなる。


「じゃ、僕は行くよ」
「もう…?ホントに、こんなことをシにきただけなのか………?」
「そうさ。悪い?」


ひとでやりたいように遊んでおいて。
アラウディはいつもこんな風に淡白であった。


(マイペースだ)
ジョットは脱力感にぐったりと机に突っ伏する。

「……………出来れば今度はおまえの中に、だしたい」


ぼそりと呟けば、アラウディはあのアクアブルーの瞳をぱちくりさせた。

「直球だね」
「悪いか」
「きみが素直なのは喜ばしいよ」

ふてくされたように机に顔をつけたままの頬に柔らかなくちびるが落とされる。

「!」
「次はたっぷり愛されてあげる、ボス」


またね。


精を吸い取る悪魔の仕業と、扉を閉ざす直前に見せた天使の微笑み。


しばらくこのNo.2には適いそうもない。

ジョットはまだ余韻の残る頬にそっと指先を当てた。






おわり



マイペース小悪魔アラウディと振り回されるウブなジョット。

童貞喪失編も書きたいわ


2012.2.25




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