彼の名はハイウェイ☆マスター


速い!

速い!

速いですヒバリさん!




沢田のあげる悲鳴は風にさらわれて遥か後方へ。
とにかく、スピードが尋常じゃない。

見慣れた並盛町の景色を抜けて、いざ、見知らぬ夜の世界に突撃。
真っ直ぐな道路をライトで浮かばせバイクは疾走する。

後ろに跨っている沢田は、もはや目を開けていられない、必死に運転中のヒバリにしがみついていた。


ひぃああ〜っ、寒い!誰か!おまわりさーん!


叫びまくる沢田に、ちょっと黙れよ、と。
ただでも囁きボイスなヒバリの声が届くはずもなかった。

ヘルメットなんてかぶってない。
研ぎ澄まされた風が二人の髪を激しく嬲る。




「うしろ乗りな」

ゲーセン帰りの沢田の前に止まった一台のバイク。
訳も分からぬまま、その車体の主にキリリと見つめられ思わず乗ってしまった。

よもやこんなところまで誘拐されるとは予想だにして居なかったわけだが。



「顔、寒いー!」

腹の底から声を張り上げて、ヒバリに回した腕にちからを込めた。

「うるさい子」
「ひゃははははは」

ナチュラルハイというヤツだ。
沢田の手にヒバリの冷たい手がほんの一時だけ重なった。



何もかも気に入らなくてモヤモヤしてたのが嘘みたい。


不意に現れて誰の手も届かない先の先に沢田を連れ出せるのはこの人だけだ。


「つまらないことなんか忘れてしまいな」

返事の代わりに、沢田は彼の背中にほっぺを押し付けた。

「君を攫ってどこまで行こうか」

バイクは止まらない。
朝はまだまだ遠くにある。


ヒバリの背中に触れた頬が、やがてとても温かくなった。






2012.1.22

*****


親に対する抵抗を知らない沢田とヒバリの夜のドライブ






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