お前等全員地面に沈め!





今日はいつもより見渡す景色と、吸い込んだ空気が心なしか綺麗だ。


ただそのリスクとして、転倒しないように常に神経を張り巡らせなければならない。




ついこの間の日曜日、私はサマーバーゲンでとあるサンダルに一目惚れをして即決購入。

それが、ものすごく厚底だったのだ。




私はというと、自分の身長にコンプレックスがあるわけではなく、むしろ標準女子よりは育っている。

…が、学園でよく一緒に居る奴等は私が小さく見えてしまうくらいには背が大きい。

まぁ異性なのだから当たり前と言えば当たり前のけとなのだけど。



だから今回私がこの身長になって彼等と並ぶことにより、絵面的に釣り合いが取れるのではないだろうか。





ただひとりを除いて。














「!? …でけーよ!!」




対面するなりそんな言葉を飛ばしてきたのは、身長161cm(自称)の翔ちゃんだ。




『……しょ、翔ちゃんが…いつもよりも小さい……!!』




「小さい言うな!名無しだって底の高い靴履いて足の長さを誤魔化してるだけじゃねーかよ!」


『帽子で身長誤魔化してる翔ちゃんに言われたくありませんー!』


「これはファッションだ!!!」




普段だと翔ちゃんと私の身長差は無いに等しいが、今日の私は翔ちゃんよりも遥かに身長が高いので、目線の高さからして違う。

だからほら、睨んではいるものの翔ちゃんの上目遣い可愛……ってコレ言ったらさらに怒るだろうから黙っておこう。




「おや、今日の名無しは随分と背が大きいんだね」


『おはよー』




あぁおはよう、そう笑顔で返してくれたのは、子羊ちゃん達と朝のお戯れタイムが終了したであろうレンだった。




『そうなの、新しいサンダルを買ってね』

「いつもと違う名無しも魅力的だね。似合っているよ」

『それはどーも』




「名無しには通用しないんだったね………くっ…はは」




甘い囁きを華麗にスルーすると、レンは何故か口元を押さえて笑いを堪えているようだった。

私のスルーっぷりはいつものことだから理由は他にあるはずだ。





『レン?』

「おいレン、今おまえ絶対俺のこと見て笑っただろ!?」



すると ご名答、とレンはさらに笑った。





「いや、こうして見るとおチビちゃんがすごくおチビちゃんだなって思ってね」

「な…っ!?」



『ぶふっ!』



そりゃそうだ。
レンは身長183cmの長身、私も今は170cmは越えているのだから。




『ねぇトキヤ、ちょっと立ち上がってよ』


「何ですか相変わらず騒がしい人ですね」




なんて言いつつ、さっきまで読んでいた本を机に置いてわざわざ立ち上がってくれるトキヤは優しい。




「名無し…大きいですね」

『うん!バーゲンでこのサンダル買ったの!』



「そんなに身長に困っていないでしょう。転んで怪我でもしたらどうするんですか」

『き、気を付けます』




「…で、翔は何故しゃがみ込んでいるんですか。ここは通り道。邪魔になります」





「お前等でっけーんだよ!立ちたくねーよ!名無しの裏切り者!!」


「そんなに悔しいのなら翔も厚底の靴をはいたらいいじゃないですか」

「…へ?」



「…………っ」


『ちょ、今トキヤ笑ったよね。今絶対翔ちゃんがシークレットブーツを履いて教室に入って来る姿を想像して笑ったよね!?』

「い、いえ、」





「何小刻みに震えてんだよ!!」





そうだな、
言えることはただひとつ、




『やっぱり翔ちゃんは小さいままじゃないとね』


「そうだね」
「そうですね」



そう笑顔で言うと、翔ちゃんはキッと可愛い可愛い上目遣いで私達を下から睨んできたのだった。





「お前等全員地面に沈みやがれ!」







(そして俺より身長低くなれ!!)


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底の高いサンダルを買ったら身長が171cmになりました。わーお。

20130922.haruka

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