愛しき俺の元同期たち!

!アシェット視点
!アシェットと同郷






『ユーリにちゅーしてって言ったらなんでだよって言われたからもう生きていけないわ私』





酒場でこっ恥ずかしい発言をして頭を抱えるこの迷惑者は、元騎士団同期。










元っていうのはまぁそのまんまの意味で既に辞めた身なわけだが、出身地が同じである名無しとはこうしてたまに飯を食いに行く。



店に入ってだいぶ経つが、この空気は随分と昔を思い出させてくれる。
よくユーリに片想いをする名無しの話を聞いてた、いや、聞かされてたっけ。



「たまに思うんだけどさ、お前らって本当に付き合ってんの?」

『う、うん』





実際に付き合い始めたのはユーリも、そして名無しもこの騎士団を辞めた後の話なんでこちらとしてはいまいち現実味がない。




「お前の願望から来るただの妄想じゃなく?」





だってそうだろ。


お前ら一体何処まで進んでるの。
余計なお世話かもしんねーけど名無しの話を聞いてたら心配になってきた。




すると名無しはこの世の終わりみたいな顔をした後おもいきりテーブルを叩く。




『ちょっと何なのアシェット本当なんなの!?言葉は時に凶器にもなるって知ってる!?』



馬鹿でかい音の次に馬鹿でかい声を出すわけだからそりゃ周りの客の視線も一気に俺等に集まるわけで。

いやすいませんコイツ今すぐ黙らすんで。
片手でガツンッと静めてやろうと思ったらその必要はなくなった。




名無しは自らテーブルに頭を打ち付けて、沈んでいったのだ。今の音は相当だぞ。




「お、おいおい名無しさん気を確かに…」


『次に私が目を開けた時、全てが夢・幻だったと気付くのかもしれない』





顔面からテーブルに突っ込んで行ったまま喋り続ける名無し。
そのうちテーブルに水溜まりが出来るんじゃないだろうか。



「お、」




すると良いタイミングで当の本人が店に現れた。

お開きになるであろう少し前に俺がユーリに連絡を入れておいたのだ。




なんの為ってそりゃ勿論お迎えだ。

悲しい話だが、最近この辺の治安もよくねぇし、それに名無しも一応は女だからな。剣術は多分未だに俺より上だろうけれど…。




「よっお迎えごくろうさま」

「おーお勤めごくろーさん」

「いや相変わらず忙しいんだわ、マジで」

「ははっ」

「いやいや笑えねーよ」






想像もしていなかったであろうその声を聞いた名無しは、ムクリと身体をあげ、振り返ったかと思えばその次にはピタリと制止。





『………アシェットごめん、本当に妄想だったわ。私の目の前についにユーリが現れたわこれもう完全に幻だわ』



「なに、おまえ等そんなに飲んでたの?」

「いや全然?」




ユーリは首をかしげた。




「状況が全然わかんねぇんだけど。とりあえず名無し、大丈夫か?」


『…はっ!え、ユーリ!?本物!?』



「ちゃんとあるぜ、両足」

『あ、うん、本当だ』





何だこのやり取り。

無駄に和むんだけど。






「なーなーユーリはさ、名無しのことちゃんと好き?」




『!?』






ここで俺による爆弾投下。名無しの表情は傑作だ。






「そうじゃなきゃこんなとこまで迎えに来るかよ」





ユーリが言葉でハッキリ言ってくるとは思っていなかったが、答えたソレは意外にも素直なものだった。





「おアツいねぇ」

「茶化すなって」





「…だってさ、良かったなー名無し」






視線をユーリから名無しに移すと顔を真っ赤にした名無しが俯いていた。照れてるのだろう。





「じゃそろそろ帰るわ」

「おー帰れ帰れ!あ、そうだ、名無し」


『へ!?なっなに!?』





「次の飯、おごれよな」





一瞬キョトンとしていたが、何が言いたいのかを理解したようだ。
立ち上がって俺に「ありがとう」と、そう言ってユーリを追い掛けた。





名無しの「ありがとう」は恐らく、飯のことじゃないのだろう。





名無しとユーリの並んで歩く姿を見て、思った。



結構さ、名無しの隣って俺の場所だったんだよ。

俺達の関係はユーリとフレンの関係に近いものがあって、ユーリのことを話す名無しや、今、ユーリと話す幸せそうな横顔を見て少しばかり寂しく思ったりそうじゃなかったり。



あ、名無しの親父さんの気持ち、今ならちょっとわかるかも。



なんてことを考えていたら、店を出る直前の名無しとユーリが俺に向かって一緒に手を降ってくるもんだから、



俺はこいつ等の幸せを願わずにはいられない。




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私の中のアシェットは馬鹿キャラなのに書いてみたらそっちに行かなかった。

20130922.haruka

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