いいんだよ、これで











「毎日毎日…よく飽きないな」







コトン…と
彼女の座るテーブルの上に温かいココアを出した。






ありがとうと小さくお礼を言う彼女はどこか不満そうだ。





『だって…フレンのお仕事が終わるまで寂しいんだもん…』






「オレの家は託児所じゃないんですけど?」








名無しは、ほぼ毎日オレの家に遊びに来る。


そして、フレンの仕事が終わるまで下らない話をしたり、
三人で飯を食うこともまあ少なくない。








とにかく何かとオレの所に転がり込んで来るのだ。






『で、でも、ユーリだって私がいる方が賑やかで良いでしょう?』


「自分で言うなよ」






…まあ良いけど。

なんて言うと、ありがと!ユーリ!と返ってくるもんだから
オレはこれ以上何も言えなくなる。




とはいえ、名無しとフレンは恋仲の関係ではない。



そして勿論のこと、名無しとオレもだ。





【下町育ちの三人組】。



下町の連中からはそう呼ばれている。





『フレンまだかなー…』






名無しはフレンに想いを寄せている。


本人から直接聞いたわけじゃないが、発言を聞いていたら十中八九そうなんだろう。




ただフレンはフレンで鈍感なのかただの馬鹿なのか、名無しの気持ちにはこれっぽっちも気付いちゃいない。





「…フレンも同じ気持ちだと思うけどな」

『何、いきなり』

「だから、お前がフレンを想ってるようにフレンもお前を想ってる」




『…なんでユーリはそう思うのよ』

「長年の付き合いから来る……勘?」





『…根拠ないじゃない!』

「ははっ」





顔を赤らめて頬を膨らませる姿はまさしく恋する女。

名無しに好かれるフレンを少し羨ましく思った。







ふと窓の外を見ると人影が目に入る。





「名無し」


『何?』








「お迎え」





外を指差すと名無しはオレの隣に来て窓を除きこんだ。





「フレン!」




その声に気付いたフレンは、こちらに向かって手を降る。








「走って行ってコケんなよ」

『うん!ユーリ、ありがと!』




「へいへい」



フレンの所へ駆け出して行く名無し。




扉が閉まる音が部屋に響いた。

直後、急にしんと静まり返ったオレの部屋。







窓枠に手を掛けて、古くからの友人二人を見ていると足元に違和感を感じ、見てみれば、ラピードがすぐ側に居た。








「…………。」







「ワフゥ…」






「はは、なんだよ、ラピード。何が言いたげだな」
















(オレはフレンの隣で笑う名無しの笑顔が好きなんだ)


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20110605.haruka

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