Ready set







仕事を片付けて自分の部屋に戻ろうとふいに見上げれば、


閉めて出て行ったはずの窓が空いている。










「名無しか…」





部屋に居るであろう思い浮かぶ人物はオレの中でただ一人。





ガチャ…



部屋の扉を開けると案の定、予想通りの人物がオレのベッドにそれはもう気持ち良さそうに眠っていた。


先に言っておくが、
オレと名無しは彼氏彼女の関係ではない。



名無しは、言うなればただの幼馴染み。




そして

オレの想い人。



「……はぁ」





思わずため息。





一体何年片想いしてるんだか。


オレらしくもないが、近すぎて逆に先に進めないのだ。

…それに、名無しはオレの気持ちにこれっぽっちも気づいちゃいない。




(いい加減気付きやがれこのやろう…)




名無しに目を戻すと、相変わらずすやすやと眠り、窓から入ってくる風は気持ち良さそうに髪の毛を靡かせる。


こんな状況は初めての事ではない、いや、むしろ良くあることだ。


そんな中、今まで一度も手を出していない自分を誉め称えたい。



…ある意味拷問だと思う。



なるべく物音を立てないようにはしているものの名無しが起きる様子はない。



(どうすっかな……)



風邪でも引かれたら困るんで、とりあえず掛けものを掛けてやろうとするとオレの手は止まる。






「…ははっ餓鬼の頃と変わんねェの」



名無しの寝顔。





餓鬼の頃から見てきてるけど変わらない、けれどあの頃よりも大分大人びている顔立ち。





「………。」






………って何マジマジ見てるんだオレ!








「お」





タイミングが良いのか悪いのか名無しの目がパチリと開いた。




『……ユーリ』
「おはよ」





『ユー……………』


オレは未だに名無しの顔を覗き込んだまま。

オレの名前を呼んだ後に瞬きを数回した名無しの顔はみるみるうちに赤くなっていく。




「…何顔赤くなってんの、お前」




正直、寝起きに名前を呼ばれた時、オレの中で心臓が物凄い音を立てた。これは反則だろ。




「へ、あ、何でだろう…起きたらユーリが目の前に居てそれで…」




ね、寝ぼけた!寝ぼけたのよ!と、必死に弁解する名無しがあまりに可愛いのでそういうことにしておいてやろう。





「…ははっ!」

『な、何で笑うのよ!』







「そういう事にしといてやるよ。」





なんだよ、脈なしでもねェってことか。






『へ?』


「こっちの話。あー腹減った。飯作るぞ飯」



『あ、あたしも手伝う!』




「そりゃ助かります」







まだまだ動き出したばかりだ。




Ready set.

(ユーリは料理上手よね、いいお嫁さんになれそう)
(オレは誰かさんのお婿さんになりたいんだけど?)

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20110605.haruka

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