正座一夜
※翔とパートナー
皆で夕飯を食った後に俺と那月の部屋に来ていた、同じクラスかつパートナーである名無しは今、とんでもない爆弾を投下してきやがった。
『女子寮に戻るの面倒だなぁ…ね、なっちゃん、今日此処泊まってってもいい?』
手に持っていた雑誌を床に向けてバサリと落とす俺と、
自身からめでたい花がポンポン飛び出てきそうな満面の笑みを浮かべる那月。
「わぁ本当ですか!?勿論いいですよ!ねっ翔ち「よくねーよ!帰れ!」
那月が大歓迎するのはおおいに予想が出来ていたので、俺は全力で阻止する。
いや、普通に考えてダメだろ。
俺達は周りから見てもすごく仲の良いパートナーらしいのだが、それ以前に名無しは女で。
そりゃ提出課題の関係で一夜を共にしたことくらいはあるがそれとこれとはまた別の話だ。
ましてや自分の部屋で一夜を過ごしたらな、レンじゃねーけど俺も男だしな、あ、いや、何もしねーけど。
那月居るし。
…いや!那月が居なくても何もしねーけどさ!
あーダメだダメだくっそ、邪念よ消えろ。
「そっそれにお前、何処で寝るんだよ!!」
…なんて聞いたものの、床で寝るか、俺を床で寝かせて俺のベッドを使うとか言うのだろう。
悲しい自信だが後者の方の可能性が遥かに高い。
『なっちゃんは身体大きいから…うーん、翔ちゃんと一緒にベッドで寝るかな』
すると名無しは特に考える様子もなくケロリと言いのけた。
そうか。
一緒に寝るという選択肢もあったか。
「あぁ、なんだそれなら…………って、は!?俺と!?」
バサッ!
俺は、先程拾い上げたばかりの雑誌を再び床へ落下させた。
『うん、ダメだった?』
ダメも何もまず何から注意してやれば良いんだ。
「っだー!そうじゃなくてさ!
おい!那月!那月からもなんか言ってやってくれよ!」
「そうですね〜、翔ちゃんも名無しちゃんもとても可愛いと思いますよ〜?」
「んなこと誰も聞いてねーよ!!」
那月に言った俺が馬鹿だった。
誰かここに聖川かトキヤあたりを呼んできてくれ。
もう頼れるのは自分だけ。
必死になって俺が頭をフル回転させていると、あろうことか名無しは勝手に俺のベッドに入り込んで完全に寝る体制になりやがった。
「おーまーえーはー!!出ろ、名無し!今すぐ俺のベッドから出ていけ!」
『ちょっとー!
布団引っ張らないでよ!翔ちゃんってば冷たいなぁ!!』
「そういう問題じゃねーだろーが!!」
『いいから翔ちゃんもベッドに入りなよ!二人でも意外と広いからさ!よいしょー!』
「どぅわっっ!!?」
まさか名無しに腕を引っ張られるとは思ってもいなくて、自分から変な声が出たと思った途端目の前には自分の布団があって、
名無しを潰さない様に身体を捩った拍子に壁に背中をぶつけた。
マジ痛ぇ。
隣の部屋の奴には心の中で謝っておいた。
「わ〜〜!二人ともずるいです!」
「何がだよ!いいから俺を助けるか!名無しを追い出せ!」
「…あっそうだ!
今日は三人で翔ちゃんのベッドで寝ましょう!」
那月はすごく良いことを思いついたかのような言い方をしているが全くもって何も解決してねーんだよ!
「はぁ!?那月…っ!お前やめろ馬鹿!!!!」
――――確実に、来る。
この狭い部屋で何故助走を付ける必要があるんだ、とか、そんな突っ込みは間に合わなかった。
「どーん!」
その那月のふざけた言葉と共にベッドのスプリングが思いきり軋んだ。
『狭…っ!さすがに三人は狭いよなっちゃん!!』
「大丈夫ですよー!今日は沢山お話しながら寝ましょうね!」
『…あれ。翔ちゃんが大人しくなった。潰れた!?』
ああ、
なんつーか、
もう、
いい加減に………!!
「お前等二人とも出て行け―――――――――――――!!」
この後、俺達が寮長に呼び出されたのは言うまでもなくて、
二人には、俺の叫び声のせいだと責められたが、俺は何一つ間違っていないと思う。
正座一夜
(何だかんだで三人一緒に寝られそうだね、正座したままだけど☆)
(わぁっ本当ですね〜!仲良しさんです!)
(おまえら少しは反省しろよな…)
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さすがに那月が入ったらベットはギチギチだと思う。
だが大歓迎!
20120831.haruka
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