トキヤの卵焼き!
※Sクラス
※やたらトキヤ
昼休み、俺は購買で買ってきたパンを自分の座席で食っていた。
ごく稀に皆で昼飯ってこともあるけど、男ってのは女子とは違って自分の座席で飯を食うのが普通。
レンの姿が見当たらないのは多分、女子と一緒に食ってるんだと思う。
あ、いや、確実に。
トキヤは、と思って見てみれば珍しいことにトキヤの前には同じクラスである名無しが立っていた。
そんな二人の様子を見つつ俺はパンを頬張った。
『トキヤ!その卵焼き一口ちょーだい!』
「名無し。
君のその手にぶら下がってる昼御飯はただの飾りですか」
『まあまあそう言わずに!』
「…仕方ないですね、ほら」
するとトキヤは自分の弁当から卵焼きをひとつ取って、ポイと名無しの口に放り投げた。
『ありがと!
ん〜トキヤの手作り卵焼きは世界一だね!』
名無しの奴、すっげーいい顔してんな。
そんなに美味いのか、トキヤの卵焼き。
「世界一って大袈裟な。…ですが悪い気はしません、ありがとうございます」
『いえいえこちらこそ!ごちそうさま!』
トキヤもトキヤで満更でもねー顔してるし。
昼飯は他の友達と食べるのか、名無しが片手に弁当を持って教室を出ていった後すぐにトキヤを声をかけられた。
「で、何ですか翔。人の顔をジロジロと」
敏感っていうかなんていうか。
「いや、前から思ってたんだけどさ、トキヤって名無しに甘いよな」
「翔、妬きもちはみっともないですよ」
「なっ!?いやそんなんじゃねーって!」
そりゃ名無しのことは好きか嫌いかと言われりゃ好きだけど、
でもこれはそういう好きじゃなくって…ってそうじゃなくてだな!
思わず片手に持っていたパンを落としそうになった。
「そうですか。では翔にもあげますよ」
「へ!?」
と、再びトキヤは卵焼きを取って
開きっぱなしになっていた俺の口に卵焼きを放り込んだ。
あ、
これ、
「やっべ、これ、すっげー美味い!!」
名無しが世界一って言ってたのが分かる気がする。
最近自分で作るか、那月に変な物ばっか食わされていたからかマジですっげー美味い。
するとトキヤは小さく笑っていた。
「名無しとは何もないので心配しないで下さい。
強いて言うなら私は親鳥の気持ちと同じなんですよ、勿論君も含めて」
「………って俺もかよ!」
トキヤの卵焼き!
(巣立つ時はふたり一緒に巣立って下さいね)
(……!?)
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トキヤおかーさん。
トキヤに卵焼きポイされたい。
20120831.haruka
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