年長者に乾杯!(レイヴン)

!ヒロインの年齢20代後半



「名無しちゃーん。昨日ギルドの連中から美味い酒貰ったんだけど今晩どうー?」



「カロル、よく見とけ。あれが汚い大人って奴だ。おまえはあぁはなるなよ」

「うん、わかった」



「ちょっと青年!何の話してんの!?少年も!すっごい真面目な顔して頷かないで!」



「っつーか、おまえ等先週も飲んでただろ。好きだよな」

「だって青年は誘っても飲めないの一点張りでしょ?それに、旅の年長組は定期的に飲んで語らなきゃやっていけないんですー!ね!名無しちゃん!」



『え、ちょ、やめてよ。確かにこの中じゃレイヴンの次だけど私まだ20代』





「…30代のおっさんは死ねって言ってる?」













ある日の夜、これといってやらなければならないことも無く、ただぼーっとしているとドアを叩く音が鳴り響く。



開けてみれば、そこには見慣れた旅の仲間が立っていた。





「名無しちゃん、どしたの?」

『ユーリ達は?』

「青年達なら出てるわよ」





『そう。じゃ、お邪魔します』




いやいや、
嘘でしょ。


そこは帰るんじゃないの!?



ドアに掛けていた俺の腕の下をくぐって部屋の中へと入ろうとする名無しちゃんを全力で阻止した。




『…何?』

「ちょっ!ちょっとちょっと!野郎の部屋に女の子一人は危ないでしょ!それとも何、もしかしておっさんのこと誘ってる!?」


すると名無しちゃんはピタリと止まったかと思いきや、スッと静かに利き手を上げた。




『…抉るわよ』

「へ、何を、」




その右手をワキワキと動かす名無しちゃんの視線の先には、心無しかおっさんの大事な大事な心臓魔導器がある気がする。






「すみません冗談ですごめんなさい」





何が危険っておっさんの身の危険だったわ。

諦めた俺は仕方なく名無しちゃんを部屋へと入れた。





「何か飲む?」




なんて、ここは宿屋だからお茶か水くらいしかないけど、

そう言うと名無しちゃんはすぐに返事をせず、きょとんとした表情をしたので、俺もつられてそんな表情になった。




『お酒は?』

「え?」





『ギルドから貰ったんでしょう?お酒』





! ああ。



そうだった。

確実な返事は貰えていなかったけれど、思い返せば断られてもいなかった。




この子はわざわざ約束を果たしに来てくれたのか。





「あー、そっか、そうだったね」


『…自分から言ってたクセに』






ごめんごめん、
そう謝りつつ、自分の口元が緩んでいるのがわかった。




かつて心臓の動いていた部分に触れてみる。

心が温まるっていうのは、今みたいなことを言うのだろう、きっと。






「お酒に付き合ってくれる仲間がいるなんておっさんは幸せ者だわ」





『付き合いじゃないわ。私も飲みたいから飲むの』





「ん、ありがとね、名無し」







ああ、温かい。






カチンとグラス同士の合わさる音が部屋に響いた。

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おっさんと飲んだので更新。
普段ちゃん付けで呼ぶ人に呼び捨てされたらドキッてするよね。

20120712.haruka

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