私が聞きたいのは(レイヴン)






『「乾杯〜!」』

「…乾杯」



『ユーリ出遅れたー!』
「青年ってばノリ悪〜い!」



「うるせーよ」


ダングレストの酒場のカウンター三席を利用しているのは、レイヴンとユーリと私。

つまりは旅仲間で成人済のメンバーである。


カロル達、未成年組には申し訳ないが、酒場のある町に泊まる際には、たまにこうして飲みに来ているのだ。勿論各自のポケットマネーで。


『フレンも来れたらよかったんだけどね』

「あいつは騎士団の仕事が忙しいんだってよ」

『そっか、残念』


カウンターで他愛もない話をしていると酒場のマスターがやってきた。


『マスター!』


この酒場には客として行くこともあれば、人手が足りない時には凛々の明星の一員としてお手伝いをすることも多々ある為、マスターとは長い付き合いになる。



「おっ名無しちゃんじゃないか。今日は少人数での来店かい?」

『そうなの!今日は大人ならではの密談をね!』


「…さっきから下らねぇ話しかしてなかっただろ」


『ユーリさっきからノリ悪い!』
「へいへいすみませんね」


ユーリのせいで私が意味深に言ってみたのも虚しく、マスターに笑われた。


「ははは!あ、そうだ。俺、前から気になってたことあるんだけどさ」

『うん?』


マスターは拭いていたグラスを丁寧に置いて再び口を開いた。



「それだけ仲間が居て旅をしていたら、そこで色恋沙汰とかにはならないものなのかい?」



マスターからの意外な質問に口元に持っていったジョッキを、口に付ける事なくテーブルに置いた。


『…そんなこと考えたこともなかった』

「でも前におっさんその類の話した事あるわよ〜?
エステルの嬢ちゃん以外からはまともな回答がなかったけど…」

『ああ…』


それこそ此処ダングレストでの話だった気がする。
エステル以外は皆、はぐらかして終わったけど。

エステルもまともな回答してなくなかったっけ…なんて思ったけれど今は本人が不在なのでよしとしよう。


「あれはおっさんがなんの前触れもなくイキナリ話を始めたからだろ」

「さり気なく聞くのが良いってもんでしょ?で、青年はどうなの〜?」


『ユーリの好みは私知ってるよ?で、なんだっけ』

「わかってんなら聞くなよ。オレもおまえの当ててやろうか?」

「え〜おっさんも知りた〜い!二人だけの内緒とかずるい〜!」


別に内緒っていうわけでもないのだけれど。

子供みたいに机を叩くレイヴンをよそにマスターは私とユーリを交互に見た。


「もしかして既に二人が付き合っているとか?」


私とユーリは顔を見合わせてニヤリと笑う。



『ないねー』
「ないな」



それが予想外だったのか、マスターは黙ったままなのでさらに付け加えた。


『幼馴染みの「腐れ縁」』


「そうなんだ。最後は声まで揃えて、君達は相当仲が良いんだね」

「そうそう〜そんで二人でよくおっさんをいじめるのよね〜」


レイヴンはいじけたような仕草を取ってジョッキを口へと運んだ。


『いじめてないよ!』



確かにユーリみたいにここまで気の合う人、私を理解してくれている人は居ないだろう。

これは、私に限らずユーリもそう感じているのだと思う。

ユーリは大事な幼馴染み。

けれどそれは恋愛感情ではない。



――だって、私は。



『だって私は旅仲間で付き合うならレイヴンがいいもん』

「…はい?」


いきなり出された自分の名前にレイヴンは目を丸くする。


『だから、レ・イ・ヴ・ン!』


ちゃんと聞いていましたかと睨みを効かすとレイヴンはハッとした後に、いつもの胡散臭い表情を浮かべた。



「…やだちょっと!そんなこと言われたらおっさん照れちゃう!おっさんも名無しちゃんのこと愛してるぜー!」



『それ言うと思った!…トイレ行ってくるー』


「はいよ」
「いってらっしゃ〜い」


私はふたりを残してトイレへと向かった。


まあレイヴンからそう返ってくるのは予想していたわけで。




まだまだ道は遠いな、なんて思った。




(そんな愛してるじゃないんだけどな)

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成人済としてはこういうのもありだと思うんだよ。成人会。
ユーリは飲めるけどセーブをかけるタイプ(あにき!)でも飲めないのか…。
フレンは自ら進んでは飲まないけど付き合いならば飲むタイプ(いい子!)
おっさんは弱くはないけどとにかく飲んで飲んで飲みまくって自爆するタイプだといい(^q^)

おっさん視点のおまけ

20120310.haruka

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