いつだって君は僕より三歩先を行く.

!年上ヒロイン
!フレン片想い







゛名無し゛を゛名無し姉さん゛と呼ばなくなったのはいつからだろう。








「やあ、名無し。こんな所で会うだなんて奇遇だね」





買い物袋を片手に、嫌そうな視線をこちらへ向けてくるひとりの女性。





『全っ然奇遇なんかじゃないわよ。確実に待ち伏せしてたでしょ、アンタ』




確かにショップに入って行く名無しの姿を見掛けたので、出てくるのを待っていたわけだが、
僕は騎士団の一員であり市民を守るのが勤めなのでそこら辺は勘違いしないで頂きたい。






「夕飯の買い物?」

『そう』

「仕事が終わったら食べに寄ってもいい?」

『ダメに決まってるでしょう』






名無しは、小さな頃からよく知っている存在だったが、歳はそれなりに離れているので兄弟のいない僕やユーリにとっては幼馴染みというよりも近所のお姉さん的存在だった。


お姉さんとして慕っていたのはもう随分と前の話で、今となっては僕にとって彼女は、一人の女性。






「ねぇ、名無し」





『好きだって言葉はもう聞き飽きたからね』




「相変わらず容赦ないよね」







名無しは僕の言葉をけして受け止めようとはしてくれない。

初めて想いを伝えた時だって「ありがとう、気持ちだけ受け取っておくね」のただ一言、それだけだった。






『私にとってフレンの存在は昔も今も変わらないの。可愛い弟みたいな存在だよ』

「名無しの中ではそうだとしても、僕の中ではそうじゃないんだよ」








もう一度姉として見ることなんて不可能だ。

彼女が他の男と居る所を見ただけで嫉妬してしまうのだから。








『昔みたいに名無し姉さんって呼んでよ』


「そうしたら昔みたいに手を繋いだり、抱きしめてくれる?」




『とんだ屁理屈ね』


「賢くなったって言って欲しいな」





『…可愛くない』







大きな溜息を吐いた名無しは、急に僕との距離を縮め、こちらへと手を伸ばした。







「え、」






そのまま頬に手を当てられたかと思えば、名無しは先程とは違う、優しく、けれどどこか悲しそうな表情を僕に見せた。






「名無し―――…?」







そして、名無しの顔がゆっくり近付いて来ることで僕の心臓は大きく波打った。










―――――――キス、される。











そう思った瞬間、名無しの唇はそのまま僕の唇を通りすぎて、耳元で止まる。

小さく吸う彼女の息すら僕の耳にはハッキリと聞こえて少しだけくすぐったい。











『だから、ありえないんだってば、フレンちゃん』












そう呟いて、名無しは僕の前を通り過ぎていった。














あぁ、僕の意気地無し。














「好きなんだよ、名無し。君が、好きなんだよ」













何度伝えたって、




僕の声が届くことはないのだろう。


















(君があまりに遠いよ)

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歳下フレンに言い寄られたらこうなる。

20130502.haruka

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