しあわせの権利
泣きじゃくるキミの姿を見るのはこれで何度目になるだろう。
そう思いながら、僕は彼女の背中を優しく擦った。
――恋人にフラれた
理由はただそれだけだ。
恋人にフラれる度に僕が名無しの家に駆け付け、泣き止むまで名無しの隣に居てあげる。
慣れとは恐ろしいもので別に嫌だとか面倒だとかそんな気持ちにはならない。
正直言って名無しは男を見る目が無い。
もう一度言おう、全く無いのだ。
名無しからその男の話を聞いた時点で「やめておけ」と言ったのに、下町育ちの女性というのは何故だか頑固なもので、フレンには関係ないと言われる始末。
結果、この有り様だけれど。
『フレンの言われた通りになった』
「だから言っただろう」
『でも私は本当に好きだったよ』
「うん、知ってる」
『可愛くない女って言われた』
「名無しは可愛いよ。馬鹿な男だね」
そう言っても名無しはただ首を振る。
僕にとっては今も昔もずっと可愛くて愛しい存在なのに。
どうして君は僕の前で泣いてばかりなのだろう。
「ねぇ、名無し」
幸せそうな顔で笑ってよ、
「頼むからさ、」
早く幸せになってよ
「いい加減に」
もういいだろう?
「僕に幸せにさせてくれよ」
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20140420.haruka
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