喧嘩は余所でやってくれ!
!若かりし頃のただの日常
下町を歩いていると゛傷だらけ゛と言うに相応しい姿の名無しに出会った。
「名無し!?」
『あーフレン…』
気まずそうに笑う名無しに一体何があったのかと問ったが、次の言葉で脱力する。
『ユーリと喧嘩した』
「喧嘩って…この歳にもなって何やってるの」
きっと下らない事がきっかけなんだろうけど。
『あ、いや、でもこれは』
「名無しだって一応は女の子だというのにこれは酷いな。ちょっとユーリの所に行ってくる」
『一応って気になるけどちょっと待って!』
名無しに手をあげたであろうユーリに説教をしてやろうとユーリの家へと足を向けると名無しに腕を引っ張られる。
『いい!行かなくていい!』
「どうして?男が女性に手を上げるなんて言語道断だよ」
『私がこんなになったのは階段から転げ落ちただけだから!』
「……はい?」
『だ、だから…』
聞けば、名無しは喧嘩した後にユーリの家から出てすぐの階段から転げ落ちたのだという。
「君って人は……」
呆れた、
僕は思わず額に手を当てる。
すると僕の後ろから聞き慣れた足音がすると、その音はすぐの所で止まった。
「お、フレンじゃねぇか。てか、え、名無し、何その姿」
『あはは…』
追ってきたであろうユーリが名無しの姿を見るなり目を丸くした。
ユーリが手をあげていないのなら当然の反応だろう。
…そうだよ、
僕の知る限り、ユーリが名無しに手をあげたことは一度もない。
だが、そう安心したのも束の間、すぐに僕もユーリと同様に目を丸くする事となる。
「ユーリ、君もどうしたんだい、その姿」
喧嘩をしたとは聞いていたけれど、ユーリの姿を見て突っ込まずにはいられなかった。
…なんていうか、魔物にでも襲われたのかと聞きたくなるくらいだ。
「これはそこに居るお嬢さんにやられたんだが」
「…え」
僕が名無しに目をやると名無しは気まずそうに僕から顔を背けた。
『だ、だって!折角買ってきたプリンをユーリが食べちゃうから…!』
「普通自分家の冷蔵庫にあるモンは食って当然だろ」
『ユーリと半分するつもりで入れておいたのに!』
「だったら事前に言うか名前でも書いておけってんだよ!」
『〜〜〜〜っっ』
「気の効く奴だなーなんて思ったオレがバカだったぜ」
『はあ?何それ腹立つ!!』
「思ったことを言ったまでだろうが!」
『ねぇ!』
「なぁ!」
『「フレンはどう思う!?」』
言い合うことを止めることなくヒートアップし続ける幼馴染み達に
僕は笑顔を向けた後、大きく息を吸い込んだ。
「ユーリ!名無し!
いい加減にしろ!!!」
下町全体に僕の声が響き渡るのが自分でもわかった。
喧嘩は余所でやってくれ!
(騒がしいと思ったらまたユーリと名無しの喧嘩かい?フレンはふたりの母親の様だねぇ)
(……………え)
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騎士団入団前くらいのあの血の気の多い時期(^q^)ふたりともフレンがだいすき!
20120503.haruka
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