ありがとう王子様!





『もう帰っていいですかね、これ早く冷蔵庫入れたいんですけど』

「ふざけんな!いいわきゃねーだろ!」


下町にチンピラって居たんだ。

そうリアルに感じている。



―――――――――
――――――
――――



買い物帰りに下町を歩いていると、綺麗なお姉さんと彼女に似合わない男性数人が人気のないあらぬ方向へと行くのでこっそり付いて行ってみれば、テレビでよくある光景になっていた。

かつあげっていうよりはどちらかというと彼女の身の危険。



私は買い物袋を一度地面に置いて、その場でおおきく振りかぶった。



途端、男一人が気絶する。



『ストラーイク!』

「テメェ何しやがる!」



私が投げたりんごは、私にまで届くくらいの大きな音を立てて見事男の頭にヒット。

小さいころからユーリやフレンとボール投げをしていただけあると自分で関心する。


え、でも何このキレ様。

殺してない、はず、多分。



『あ、トマトとかやわらかいものにするべきでしたかね』



汁まみれになるけど、なんて付け加えれば奴等はさらに怒り狂う。

そんなチンピラ共を無視して、私は地面に置いていた買い物袋に指をさした。



『もう帰っていいですかね、これ早く冷蔵庫入れたいんですけど』

「ふざけんな!いいわきゃねーだろ!」


…ですよね!


「お前、自分がどういう状況に置かれてんのかわかってんのか?」

『はい?』


ふと周りを見渡すと先程まで側にいたはずのお姉さんの姿はなくなっている。


でも逆に居なくなってくれた方が守るものも無くなって動きやすいから状況としては好都合だ。



一人気絶させたから、あとは三人。

ま、大丈夫だろう。



『おにーさんよく見たら下町の人じゃないよね?』



下町を汚さないで欲しい。

…ってことで、追い出しますか。



動きやすいように自分の長いスカートをギリギリまで捲りあげて太股あたりで結び付ける。

するとさっきまで戦闘対戦だったひとりの男が口笛を鳴らした。


「おっよく見りゃこいつも上玉じゃねぇか」



『それはどーも。けど、下町育ちの女をなめないで……――よっっ!』



私は勢いよく地を蹴った。


――――――
――――
――


「ちっくしょおおおおおおおおお!」

『だから言ったじゃない、舐めないでって』


対、女一人だ。

男は完全に舐めていたのだろう。

残っているのが自分ひとりだけだと分かった瞬間、ポケットからナイフを取り出して狂ったように振り回す。


『うわっ!?』


ギリギリの所で避けたものの、頬にピリッと痛みを感じた。

頬に触れるとその手は鮮やかな赤色に染まる。

…ていうかちょっと待ちなさいよ、喧嘩に刃物はないでしょうが…!


『あんたねぇ…!』


私は軽く舌打ちしてそいつのもとへと近づく―――が、その男の元にたどり着く前に私の身体は浮き上がる。


『なっ!?』
「へへへ」


完全に私の失態。

ナイフを持っていない別の男が私の両脇を掴んでいた。


……気絶した振りをして機会を伺っていたって所か。



「どんなに喧嘩が強くてもよォ…男の力には敵わねぇよな」

『…そうみたいね、今嫌でも実感してる』



ダメだ、動けない。

骨折くらいで済まされるか…あ、いや、これもしかしたら私殺されるかも。


そう思っていると、あろうことか男は私の服に手を掛けた。


『な、ちょ!?』

「こんな上玉、ただ殺すだけじゃぁ勿体無ぇだろ?」


これは予想外。
クツクツ笑うその姿に嫌な予感しかしない。

まいった。


『――――っっ』



口元を押さえられてゲームオーバーか。

さすがにこんな人気のない所じゃ助けにくる人なんて




「魔神剣!」




――――――いた。





「名無し!」

『フレン!?』


そこに現れた人は私のよく知る人物だった。


フレンが来てくれてから事はトントン拍子で進んで行き、チンピラ共はフレン配下の騎士団の方々へと引き取られていった。


「見廻りをしていたら女性が泣きながら僕達の所に助けを求めにきたんだ」

『あぁ、お姉さんが…』


逃げたんじゃなくてわざわざ助けを呼びに行ってくれてたんだ。


「自分を助けてくれたのは女性だって言うからまさかと思って行ってみれば…君が居た」


フレンは私の傷付いた頬に優しく触れる。


『え、フレン!?』


急に下を向いたフレンの顔を覗こうとすると見るなと言うかのように抱き締められる。



「――――くれ」


『…はい?』



「頼むから無茶はこれっきりにしてくれ」



どんなに強かったとしても名無しは女性だ、と。



――震える声で、フレンはそう言う。



『ごめん、心配させちゃったね』


子供をあやすようにフレンの背中をポンポンとたたく。


「本当だよ。君は僕を不安にさせるのが好きなのかい?」

『はは…そうなの…かも…』


そんなのはごめんだよと、抱き締めていた手を離したフレンと目が合う。

今度は手を握られてその顔が近づいたかと思うと互いのおでこが合わさった。



「――無事で良かった」



フレンのその言葉を聞いて、少しだけ泣きそうになった。

『私ね、ちょっとだけ怖かったんだよ』

「ちょっとだけって…君は相変わらず素直じゃないんだね」

『けど』

「うん?」

『心の何処かでフレンが来てくれるんじゃないかって思ってたから』


「はは、まったく名無しは…参ったな…」



そんな可愛いことを言われたらこれ以上は怒れないじゃないか、と彼は眉を下げて、



いつもの笑顔で笑うのだ。



(ね、本当に来てくれたでしょう?)

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仕事中にいちゃつくなよ隊長。
フレンのあの騎士団マント引っ張って怒られたい(^q^)

20120310.haruka

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