愛しいアイツに
!微微微エロ
「名無し好きだ愛してる」
『あ、そ』
「なぁ、おまえはどうなんだよ」
『さぁね』
「言ってくんなきゃわかんねーだろ。好きか?オレのこと」
普段ならばこんなことを言うキャラでないということは、本人だってわかっているはず。
一体何がこうさせたかというと、それはアルコールが原因であって、いつも凛として男らしさ全開な彼が今、グデングデンになって私にもたれ掛かっている。
それはまるで町中でイチャイチャするカップル(勿論一方的に)のようで、こんな姿をカロルが見たらきっと幻滅するのだろう。
あぁ、いっそ見せてやりたい。
『はぁ……ねぇ、そこのこっそりと帰ろうとしているレイヴンさん?私言ったよね、ユーリに酒は飲ませるなって』
さっきからベタベタベタベタ抱きついてくる泥酔野郎、もといユーリを全力で剥がして私はレイヴンを睨み付けた。
「あ〜いや〜ははは…」
「名無しー」
『笑って誤魔化さない!』
ユーリの絶対用事のない呼び掛けをスルーして、部屋を出ようとするレイヴンに近付いた。
よく見るとレイヴンも酔っているのか若干顔が赤くて、唯一素面な私は余計に苛立ちを感じた。
「…いやね、青年が下戸なのは聞いてたけど、ここまでひどいとはおっさんも思っていなかったわけよ」
『…下戸って意味知ってる?』
「今日知ったかな!本当にダメなんだね!」
『…どうせユーリを挑発させる様なことでも言って飲ませたんでしょ』
「さすが名無しちゃん!まぁその結果、青年は名無しちゃんの名前を連呼し続けてここに連れてくるしかなかったってわけよ」
『……厄介事を押し付けるなんて最低……ってちょっとやめてよ馬鹿じゃないの!!?』
「いって!」
バシィン!!
と部屋に音が響いた。
手をあげたのは勿論私。
レイヴンと話をしている途中からユーリが後ろから抱き締めてきたまではまだいい。
それに構うことなく放置し続けていると、あろうことかユーリは私の首筋に吸い付いてきたのだ。
こうなって当然だと思う。
『うわっ!?』
すると少しは反省するのかと思いきや、効果は逆だったようで、ユーリが私とレイヴンの間に立って直ぐに私の視界はグルンと変わってユーリでいっぱいになる。
つまりは、その場でユーリに押し倒されたのだ。
「名無し」
『な…に………』
その声はいつもより低く、怒りを含んでいるように感じられて思わず声が小さくなった。
「おっさんばっか見てんなよ。おまえはオレだけ見てりゃ良いんだから」
『……は!?何それ妬きもち!?ユーリらしくもない!』
さっきビクついてしまった私はなんだったのだろうか。
絶対無いとは思うけれど、今言われた言葉が素面のユーリであれば嬉しいのに今じゃ全く嬉しくない。
それに両手首押さえつけられてるからね、今。
いい加減にしてほしいよね。
「酔った青年がぼやいてたけど、我慢してるだけで結構妬いてたみたいよ」
『そもそも私そんな妬かれるようなことした覚えないから!』
「いやでも現に今だって妬いてるわけでしょ。おっさんに」
『そうかもしれないけど…っていうかこのユーリ剥がしてくれない?ビクともしないの』
壁越しとは言うけど、今回はユーリ越しに話をする私とレイヴン。ユーリが邪魔だ。
「いや、おっさん、名無しちゃんに手を貸すことは出来ないよ」
『はぁ!?』
その予想外の返答をしたレイヴンに詰め寄りたくてもユーリがそうさせてくれない。
あぁもう私の周りは敵だけか!!
「女の子はわからないかもしれないけどね、男の子だって大変なんだよ、色々」
いやいや男だって女の大変さがわからないでしょう!生理痛とかなめないで欲しい!
男っていう生き物は本当に勝手だよね!とか言い返してやりたい所だけど酔っ払いと言い争うのも面倒なので辞めた。
『!?』
と、急に腹回りがくすぐったくなって何事かと下に目を下ろすと、ユーリはもう一段階進むべく私の服に手を侵入させていた。
心の準備なしに直に伝わってきたユーリの手の温度に過剰なまでに反応してしまった。
『ひあっ!?ちょっ!まっっままま待って待って!ここはまずい………………って!!』
あぁ、まずいのはもう私じゃない、ユーリの方だ。
馬乗りになられてハッキリとわかってしまった。
でもさ…
こんなのってないよ!!
「皆にはさ、午後まで自由行動ってことで伝えておくから!ごゆっくり!」
『余計な気回さなくていいから助け…って!っまっ!っうぁあ…………っお…………っっ覚えてろよレイヴンンンンンンンンンンンンンンンン!!!!!!!!!!!』
そんな私の叫びも虚しく、ユーリから合鍵を拝借していたレイヴンは、律儀に鍵まで閉めていったのだ。
最後に少しだけ開いたドアから見えたレイヴンの表情を私は一生忘れないだろう。
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「ん………」
ふいに目を冷ますと、すぐ隣にあったその存在を見て、オレは目をカッ開いた。
一度冷静になって辺りを見渡せば、床に脱ぎ捨てられたオレ達の服、そしてベッドの上にはボタンが数個落ちていた。
加えてこの頭痛とオレの腕に残る引掻き傷、名無しの身体に付いているいくつもの跡。
何が起きたかを思い出すには十分過ぎる光景だった。
一体どれだけ激かったのか。
…いや、なんだ、
そもそも全てを忘れているわけでもない。
断片的だが記憶はある。
ただ、何を思い出したとしてもひとつだけわかることがあるのだ。
今日、オレは殺されるかもしれない。
愛しいアイツに
(どんだけ溜まってたんだよ、オレ…)
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やっちまった感を否めないユーリが書きたかった。
書いててすごく楽しかった。
20121104.haruka
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[mokuji]
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