側で花の香り






「ユーリ!ほら!」




下町を歩いていると名前を呼ばれたのと同時にこっちに向かって何かが飛んできたので、オレは反射的に手を出した。





「うわ…!…って何だよコレ、花束!?」





受け取ったモノを見るとそれは花束で、中を覗いてみれば、さまざまな色や形をした花が入っているが、生憎オレは花に詳しくないので何一つとして名前がわからなかった。





「今店の整理をしててね。明日にはこの子達痛んじゃうからアンタにあげるよ!」





花屋のおばさんは水の入ったバケツを持って、何やら沢山の花達を入れ換えていた。

花も痛むと売れなくなるとかあるんだな。




…まぁ普通に考えりゃそうなるか。





「なぁ、オレ、花の育て方とかわかんねぇんだけど…」




「何言ってんだい!
花くらいあげる彼女のひとりやふたり居るだろうさ!」





「ひとりやふたりって…ひとりしかいねーよ」







「そうなのかい?
それじゃ、名無しによろしくね!」







花屋のおばさんは、バシンとオレの背中を叩いてレジの方へと戻っていった。



これがまた痛いってモンで。











「知ってたならわざわざ言わないでくれ…」






――――――――――――
――――――――
―――――






「さてどうすっかな……」



オレは、もらった花束を剣と同じ様に肩に乗せて考えていた。



自分で言うのも何だが、オレが名無しに花束をやる日が来ようとは思ってもいなかった。






名無しは驚くだろうか。





または、何か後ろめたいことがあるんじゃないかとか言ってくるかもしれない。

と、まぁ、たいして結論もでないうちに名無しの家に着いてしまったワケで。





…普通にやりゃいいだろ。

と言いつつも何故かドアの前で深呼吸をしている自分がいた。






そしてオレは、
名無しの家のチャイムを鳴らした。






――――――――――――
――――――――
―――――







ピンポーン





『はーい!』




呼び鈴が聞こえたので私は鍵を開ける為にドアの方へと向かった。






『あれ?』





多分訪問者はユーリのはずだけど、いつもなら「オレー」とか聞こえて来るのに今日は何も聞こえない。






ユーリだと確信しつつ、私はドアの覗き穴を覗いた。





『は、』







花束!?


ユーリが花束を持ってる。


何で!?






ユーリが花束をもってる。(二回目)





いや、でもまぁ違和感のあるオプションが付いていたとしてもユーリはユーリだし



とりあえず私は鍵を開けてドアを手前に引いた。





ガチャッ





『ユーリ?』






ガッ





「よ…。…ってオイ、何でチェーン掛けてるんだよおまえ」







『いや、その肩に乗せてるものが怪しすぎてユーリに成り済ました誰かだったら怖いなって』




「何かしらの反応はされると思っちゃいたが、ここまで酷い反応をされるとは思わなかったよ」





そもそもそんな術技ねぇだろ!

そんなキレのある突っ込みを頂いて私はドアに繋がったチェーンを外してユーリを部屋に招いた。






「これやる」




『え、わっ!?』





ユーリは乱暴に私の両手に花束を落として、そのままドカリと椅子に座った。





『で、どうしたのこれ』

「花屋のおばさんに貰った。誰かにやれって」



『ユーリが花を買うなんて想像出来ないと思ってたらそういうことね』







「…悪かったな。
けど、おまえは意外と様になってるんだな」







『は!?』






「おっと」





いつものああ言えばこう言う、皮肉な言葉が返ってくるかと思いきや、まさかの言葉によって思わず手がゆるんだけれど、床に落ちる前にユーリが支えて私の手に戻してくれた。





「珍しく照れてやんの」

『うっうぅうううるさい!』




「ははっ」





私は花束を花瓶に入れてテーブルに置き、ユーリの向かい側に座った。





『よし、綺麗にできた!』




「なぁ」




『なに?』





「花なんか貰って嬉しいもんか?」

『何で?』

「いや何となく」








『…嬉しいよ』




「ん?」






『嬉しかったよ、すごく』






すると今度はユーリが私と合わせていた目線をパッと外した。






「そっか、」







ああ、きっと、照れているのだろう。








『うん。それからね、
花束を抱えたユーリ、すごくかっこ良かったよ』











「チェーンかけたくせによく言うよ」









コツンと私のおでこを弾いた後、ゆっくりと顔が近付いてきたので私はそっと目を瞑った。


















花束を肩に乗せたユーリはすごく新鮮で


勿論驚いたけれど、






それはまるで王子さまのようでした。





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友達べっぺ購入記念!おめでとう!
さぁ一緒に下町で萌えたぎろうぜヒャッホー!

20120831.haruka

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