02.すごく納得いきました






『あ、これ美味しい』

「どれ」

『はい』




「ん、美味いな」




何の躊躇いもなく自分のスプーンをユーリの口元へと持って行く名無しと、口元へ運ばれたスプーンを同じく何の躊躇いもなくくわえたユーリ。





「…ねぇ、もしかして青年達って付き合ってる?」





「『いや、付き合ってないけど』」





レイヴンに目をやった二人は、

同時に同じ言葉で答えるのだった。





―――――――――
―――――
―――





「絶対普通じゃないと思うんだ!おっさんは!」




―――ダンッ!



机が良い音を鳴らした。


一行は昼食後に宿を取り、夜まで各自自由に過ごすことに決まった。


名無しとユーリがその辺に散歩に行くと出て行ったが、暇を持て余したメンバーはそのまま宿屋に残っていたのだ。




「ただの幼馴染みだからってあぁはならんでしょう!青年とはああでもフレンちゃんとあぁはならんでしょう!?」

「それ以前にフレンはそういうの人前だからって拒否しそうだよね」




「……うん!その通りだね!おっさん間違っちゃった!少年正解!」


「レイヴン…そのテンションどうしたの…」




落ち着きなよ、
12歳に落ち着きを求められる35歳だがその少年の努力は虚しく終わる。



「で、でもわたしもそう思います。この前の宿屋の件だってそうです!」

「宿屋?」

「ほら、誰が床で寝るかで揉めたじゃないですか」




以前、宿屋でベッドの数が足りず、誰かが床で寝なければならなくなった時に、名無しはユーリと一緒に寝るから誰も床で寝る必要は無いと言い、ユーリもあっさりとそれを受け入れたということがあったのだ。




「…あーあった!あったわ!あの時はおっさんもベッドで寝たかったからそこまで気にしなかったけど」

「レイヴン…」






「本人達が付き合ってないって言ってるんだからそうなんじゃないの?」



うるさくて集中できたもんじゃないわ、リタは先程まで読み進めていた分厚い本を閉じた。



「リタは気にならないんです?わたしはすごく気になります!」

「え…!?あぁ…まあ…気にならなくもないかもね…えぇ」

「リタっちは本当に嬢ちゃんに甘いわよね」



「うっうるさいわね!あ、噂をすればじゃないの、アレ」




エステルに甘いという自分を否定することが出来ないリタは視線を窓から見える外へと反らしたが、たまたまそこから見えた二人の名前を出すことで逃れる事が出来たようだ。


窓から見える木陰にユーリと名無しが居るので嘘は付いていない。




「あ、名無しが寝転がった」

「青年と名無しちゃんは一緒に寝るのが趣味なのかな」

「そうなんです?」

「違うと思うわよ」



一つの窓から覗いたままカロル、レイヴン、エステル、リタと続いた。


ここまで会話は聞こえないが、何かを話しているようだ。



ぽつり、
窓枠に手を置いたエステルは呟いた。



「ユーリと名無しが恋人同士と言わないのなら恋人とは何なのでしょうね」

「ボクもナンと友達でもあんな風には出来ないよ」

「嬢ちゃんに少年、アレは異例だから安心して」






「思ったのだけれど、」






これまで会話に参加していなかったジュディスが二人の名を呼び、小さく微笑んで口を開いた。








「あぁいうのは、恋人ではなく夫婦っていうんじゃないかしら」








「「「「ああ…」」」」






結論らしい結論が出た後は、何事も無かったかのように各々が好きな時間を過ごし始めたという。














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付き合ってるようで付き合っていないもどかしい関係が好き。

20120618.haruka

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