傍らに恋
『幼馴染みが良い男っていうのもどうかと思います』
突然そんな事を言い放ったオレの幼馴染み。
「そりゃどーも。けど、誉めても何も出ねぇからな」
勿論悪い気はしないが、良いも悪いも結局それはただの人の好みであって、皆が皆同じことを思うものではない。
『期待はしてません！この前ね、友達と恋とかそいう類の話をしたの』
「あぁ今日は雨か」
『ちょ、馬鹿にしないでよ！』
名無しは頬を膨らませたが、オレの言ったことは強ち間違いではない。
多分、フレンも聞いていたらオレと同じことを言うだろう。
名無しとは昔からの付き合いだが、これまで一度も名無しの恋愛話というものを聞いたことがなかった。
「おまえ、本当に好きな奴とか居ねぇの？」
オレが言うのもなんだが、名無しはそこそこ可愛い。
多少頼りないが、性格も悪くない。
それあってか、これまでに何人かの野郎共が名無しに言い寄って来たが、本人は特に興味も沸かないのか、軽くあしらって
それで終わり。
そんな名無しといつも一緒に居たオレには協力要請やら、実はオレ達が付き合っているのではないかと言う疑惑が浮上、
そんなこともあったが、すべては
幼馴染みの特権だと
そう答えた。
『うん、いない、と思う。ユーリは？ユーリは居るの？』
その質問に顔には出さないものの、オレの心臓は少しだけ跳ねあがる。
ああしてるさ
今オレの目の前にいるおまえにな、
そう言えたならどれだけ楽だろうか。
名無しに想いを寄せていた奴等に対して優越感が無かったと言えばそれは嘘になる。
好いている奴といつも一緒に居られるのだから当たり前だ。
男なんて皆そんなもの
単純な生き物なんだよ。
「さあな」
『すぐそうやってはぐらかす』
だってよ、オレの気持ちを知ったらおまえ、困るだろ
そう心の中で答えた。
「今はおまえの話。この歳にもなって好きな奴がひとりも居ないってのも流石に心配だな」
余計なお世話かもしれないけれど。
「付き合っても良いかもとか思った奴も居ないのか？」
すると名無しは考えるように少しだけ黙り込んだ後、
ぽつりと溢れ落としたようにオレの名前を呼んだ。
『ユーリ』
「なんだよ」
『どんな男の人と居てもユーリと比べちゃうんだよね』
「は？」
『ユーリとずっと一緒に居たからかな。それでね、結局はユーリと居る時の方が楽しいって思っちゃってそれ以上の人って居ないんだよね』
淡々と話を続けて行く名無しに対してオレは開いた口が塞がらない。
『この先もそうなのかもしれない』
「ちょ、待て、待て落ち着け」
『え、私は落ち着いてるよ？』
ああ。ごもっともだ。
落ち着かないといけないのはオレの方だ。
けど、そりゃないだろ。
「おまえさ、とっくにしてるんじゃねぇか」
名無しは鈍感だ。
そう思っていたが
オレも同じくらい鈍かったようだ。
傍らに恋
------------------
書いてて死ぬほど恥ずかしかった(^q^)
幼馴染が良い男ってさ、ボーダーラインがグンとあがるよ。
20120603.haruka
[back][ 22/86 ][＊prev] [next＃]
[mokuji]
[しおりを挟む]