一旦帝都に帰りてぇ

!ヒロイン名前のみ
!ユーリ若干のキャラ崩壊









すべては、青年の一言から。





「名無し、それ取っ……」






―――――ピシリ。






今の状況をあらわすならば、この音が適切だろう。





青年の口から出された聞き慣れないその名前に、殆どのメンバーが固まった。





そして、その発言をした本人すらも。






「…………えっと、」






凛々の明星の首領、カロルが皆を代表して声を掛けようとしたが、その瞬間、喋るなと言わんばかりに目の前に手の平を出された。




手を伸ばした本人はもう片方の手で自分の顔を覆う。






「ああ、悪い、頼むからほっといてくれ」







普段あまり見せることの無いその焦った様子にカロルは目を丸くした。








「名無し、と言ったかしら?」


「…ジュディさん、今オレ、ほっとけと言ったばかりなんだがな」



「あら、そうだったかしら、ごめんなさい?」





けれど、こんな面白いことを逃したくないわ、とクリティア族の女性、ジュディスは言う。





「で?誰なのさ、その名無しちゃんってのは」





レイヴンが確信に迫る発言をした途端、皆の視線が一気にユーリに集中する。



最初から誰も放って置くつもりはなかったのだろうと観念したユーリは、一度大きな溜め息を付いて白状した。






「幼馴染みだよ。
よく一緒に居たからつい癖で呼んじまった」



「へぇ〜っていうことはフレンとも幼馴染みになるんだよね?」



「まーな」



「全然知らなかったよ、ボク」



「だろうな、言ってねえし」





もうこの話は終りだ、と言わんばかりにユーリは立ち上がった。





――が、今度はユーリをキツく睨むもうひとりの金色の髪を持つ青年が口を開いた。




「ユーリ。皆に言うのはそれだけかい?」



「は?何が?」





ユーリの態度にフレンの顔がさらに険しくなった。






「名無しも可哀想だな。本当にユーリには勿体ないよ」




「な…っフレン!おまえなぁ…!」








「やっぱり、ね」


「…え、何?何の話をしてるの?」





微笑むジュディスとイマイチ状況を理解しきれていないカロル。





「青年、白状しようか。少年以外はもう察しちゃった感じよ」





するとユーリは額に手の甲を当てた後、





「あーそうだよ!彼女だよ!オレの!」





半ばヤケクソにそう言い放った。


青年の顔は心なしか赤い。





「え!?じゃあ、さっき言ってた゛名無し゛さんがユーリの、その、恋人ってこと!?」


「今そう言ったばかりだろ。何度も言わせないでくれよ、先生」





「ご、ごめん。けど何か意外でさ。ユーリはもっと自由人というか…何にも縛られないでフラフラしてるのかと思ってたよ」



「…悪かったな、これでも一途なんだよ」



「そう思われるのは普段の行いが影響しているんだよ、ユーリ」



「フレンは黙っててくれ」




「で?青年はその名無しちゃんと結婚は考えてないの?」


「おっさんから結婚って言葉が出るなんて可笑しな話だな」


「酷い!何その偏見!
…はぐらかすって事は、もうちょっと色々吟味する感じなの?」





レイヴンが怪し気に笑うと、間を置くこと無くユーリはおっさんと一緒にするなよ、と言い放った。






「あいつ以外考えられねえよ」







「わ…わお…」

「素敵な言葉ね」

「ユーリ…なんか…すごい恥ずかしい…」



「なんでカロル先生が照れてるんだよ」



「いや…だって…ボクそういう話したことないし…」



「もう長い付き合いになるのだし、たまには皆でこんな話をするのも悪くないんじゃないかしら」




ね?とジュディスが周りを見渡すと、そこに生き生きとしたレイヴンの姿が目に入った。





「おっさんも思ったー!
エステルの嬢ちゃんがいたら特に喜びそうだけどリタっちと出掛けちゃってるし…とりあえず他の皆で恋愛トークしようよ!」



「一番の年長者がはしゃぐなよ」


「恋人持ちの青年は黙ってて!まずはおっさんの恋愛話から!」


「え、レイヴンの話はいいよ、なんか想像つくし」


「少年ひっどい…!」


「私は語る程ないし秘密にしておこうかしら?」


「色々聞きたかったけどミステリアスなジュディスちゃんも素敵ー!」



「レイヴンは結局ジュディスなら何でも良いんでしょ…」



「じゃあフレンちゃんはどうなのよ?」

「え、は、はい!?」

「青年も素直になったんだからフレンちゃんもあんな事やそんな事暴露しちゃいなよ〜!」

「え、いや、その、僕は………!!」




ワイワイ盛り上がる輪からそっと外れたユーリは、窓枠に手を掛けて



開いた窓から青く澄んだ空を見上げた。







「あー…クソ、」







(禁断症状ってか、)

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取り乱したユーリが書きたかっただけなんだ。
でもカロルが間違えて"おかーさん!"と呼んで赤面もありだよな、うん。
え?誰得かって?完全なる私得。

20120527.haruka

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