そんな日常






「それじゃあわたしはもう少し買い物をするので此処で…」


「荷物が多くなるってんなら付き合うぜ?」


「いいえ、そんな荷物になりませんし、私用のモノなので大丈夫です!ありがとうございます」


「そっか。じゃ先に、名無し達の所戻ってるな」


「はい!」



エステルと街でグミ類及び食材の買い出しをしていたが、私用の買い物があるらしく一度別れた。





「…これは意外と」





エステルに持たせるわけにも行かないので、荷物は全部引き取って来たものの思いの外ずっしりと腕に来た。


「よっと…」




自分の持ちやすいように体制を整えようと身体を動かせば、たまたま視界に入った近くの木陰に見慣れた姿があった。






「名無し」

『あ、おかえり。買い物おわったの?』

「ああ。けどエステルがまだ買いたいモンがあるらしくて一度別れた」

『そっか。まだしばらく動けそうにないから良かったよ』

「何してんだ?」





『エンジェル達に囲まれて困ってるの』

「はは、なんだそりゃ」




名無しの膝には、カロルの頭が、その反対側の肩にはリタがもたれ掛かる様にして眠っていた。

ジュディやおっさんが見当たらないが、まぁきっとその辺をうろついているのだろう。





「…しっかし意外だな」

『何が?』





「カロルはいいとしてリタってあまり人に甘えないからよ」




リタはあまり人に弱味を見せたり、頼ったりするような奴じゃない。

そういう環境を作ってしまっているつもりもないし、つまりは昔からそういう性格なんだろう。



だからこそこういう光景が珍しい、というと名無しは本を読んでてそのまま眠っただけだと言う。



…それだけじゃないと思うんだがな。





両隣は満席なので、オレは名無しの向かい側にしゃがみ込んだ。





『こうやって寝顔を見てるとまだまだ子供なんだなって思うよね』

「ああ。12と15…だったか?」




『うん。私達がそれくらいの頃なんて、まだ将来のこととか何も考えずにただ下町で暮らしてたよね』




「…だな」





世界だなんだ考えずに、ただ目の前のことに夢中で毎日を生きて、下らないことで喧嘩して。





『そんな私に比べて、カロルやリタは小さな身体ですごく大きなものを背負ってる』

「…あぁ」





けれど側に両親は居ない。

そもそも居るのかもわからない。

誰かに甘えたい時だってあっただろう。

自分達だってそうだった。





『だから私、少しでも心の寄り所になれたらな、なんて思うの』




名無しは恥ずかしそうに言った後、他の皆には内緒だよと言った。





「十分寄り所になれてるだろうよ」

『…そうだと嬉しい』



オレの寄り所でもある、なんてこっ恥ずかしい言葉は胸に秘めて。



ふいに名無しがカロルの頭を撫でた時、それに反応するかの様にカロルが身を捩った。






「ん…おかー…さん…」

『わお』




そして何事もなかったかの様に再び眠る。





「…お前、カロルを生んでたのか」



『とぼけないでよ、パパはユーリでしょ?』



「違いねぇな」



『…ちょっと!そこ突っ込んでよ!』

「ははっ」



オレ達は顔を見合わせて静かに笑った。



そして、オレは無防備なリタの頭を撫でてやると、幸せそうなあどけない笑顔を見せたのだ。







今、オレがこの歳で誰かを嫁に貰って家庭を築くなんて全くもって想像が出来ない。

周りにもありえないと馬鹿にされるだろう。

けど、オレの隣で名無しが笑っていて、その腕には子供達がいる、










(…ねぇ青年達、何やってんの)
((!!!))
(あ、いいよ、おっさん何も聞いてないから)
(いつから居やがったおっさん…)
(私、カロル生んでないからね!?)
(はいはいわかってるわよ〜)


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母性本能しか沸かないんだぜ?(^q^)

20120315.haruka

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