背負う罪を雨は流してはくれない








「法や評議会がおまえを許してもオレはおまえを許さねえ」




人を殺めるとはこういうことなのか。


罪を背負うとはこういうことなのか。




何事もなかったかのように静かに流れるダングレストの橋上で


先程まで剣を握っていた左手を見つめた。





―――――――――
――――――
――――





宿屋へ戻ると宿屋の前には、名無しとラピードがしゃがみ込んでいた。




「…なに、やってんだよ、こんな時間に」

『ユーリこそ』




「オレは野暮用」



『…そう』



「………」





正直、今一番会いたくなかった人物。





『いつまで突っ立ってるの?中入れば?』



「…何も聞かねえのな」



『聞いて欲しいなら聞くけど?』


「はは」



暗闇の中でよかったとそう思う。





今、名無しの目をちゃんと見て話す自信がない。





ユーリ、とオレの名前を呼ぶ声で名無しがオレのすぐ目の前に来たことに気付く。

名無しはそっとオレの左頬に右手を添えた。






「なん、」






なんでお前がそんな悲しい顔してんだよ。




あぁ、こいつはわかっているんだ。


わかってしまったんだということが嫌でも理解出来た。




「…んでおまえが泣くんだよ」

『…泣いてない』




そう言い張る名無しは静かに涙を流している。


『私、何が悪いのかがわからないよ。ユーリのしたことで救われる人が沢山いるのも事実。だから、誰を、何を責めていいかがわからない、何が正しいのかもわからない』






――――だから、ごめん。






そんな名無しに返す言葉が見つからなくて。

ただ、揺らぐ。






「…とうに覚悟は出来てたんだけどな」



「わり、もう少しこのままで居させてくれ」







吸い込まれるようにそのまま名無しの肩に自分の頭を預けた。





―――この汚れた左手では触れずに。








きっと、
もうすぐ雨が降る。










(だから、共に)

--------------------------------
相当の覚悟だったかと。

20120315.haruka

[back]

[ 32/86 ]

[*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]



×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -