もうすこし、このまま





皆が寝静まった真夜中、パチパチと飛び散る火の粉を見つめていると、

自分の背後にあるテントの布が擦れ合う音と共にゆらりと影が動いた。




「…なんだ眠れないのか?」

『まぁそんなとこ。ユーリはずっと此処?私変わろうか?』




どうせ眠れないし。
そう彼女は続ける。





「はは、いいよ、オレも眠れねェし」


テントから出てきたのは、共に旅をしている幼馴染みの名無し。




名無しは、ふぅん、と曖昧な返事をしてオレの隣に座った。




「寒いだろ、これ使えよ」

『テントに戻ればあるからいらないよ。…ていうかそれじゃあユーリが風邪引いちゃうじゃない』




先程まで自分に掛けていた毛布を名無しにやるといらないと断られる。

が、オレが掛けて名無しが掛けないというのは納得がいかない。




「オレは風邪引かないから大丈夫だよ」

『何を根拠に…』



ここまで来ると掛けろ、要らないの無限ループに陥るのが目に見えているわけで。

さぁどうすっかな、なんて考えていると、



『じゃあこうする』
「あ、あぁ…」




名無しは、さらにオレに近付き、自分の肩とオレの肩に毛布をかけた。

つまりはふたりでひとつの毛布を使うということ。




名無しは昔からこういうことをするのは知っていたが、この歳にされるとなると餓鬼だった頃とは違う。




昔と今とでは違うということを知らせるかのようにオレの心臓はドキリと跳ね上がった。




わかってんのかね、このお嬢さんは。





『静かだね』
「ああ」




名無しは溜め息をひとつついて続ける。





『下町の皆は元気かな』

「あいつらなら元気にやってるだろ」

『ふふっそうだったね。もし、』

「ん?」

『もし全てが終わったら、私は、ユーリは、何をしているんだろう。』

「さぁ、な」




『…私は、ずっとユーリの隣に居たい、なぁ』






「おっと…」




消え入る様な声が漏れた後に名無しの頭がオレとは反対方向へとぐらついた。
それをぎりぎりのところで支えてそっとオレの方へと引き寄せた。





そこからは規則正しい寝息が聞こえる。








「…大歓迎だっての」



願わくばいつまでも君と共に。



その声は、
綺麗な星空へと飲み込まれていった。




―――……




「おはよー…あれ?どうしたの?」


起きて来たカロルに気づいたエステルは、カロルの方へと振り返る。


そのまま人差し指を立て、その指をそっと口元へと持っていった。


「ふふ、名無しとユーリ、とても気持ち良さそうに眠っているんです」




「本当だ。
二人とも幸せそうな夢を見ていそうだね」



「ええ」









(きみのとなりで)

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幼馴染とはどうしてこんなにも萌えるのだろうか。

20120229.haruka

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