ネタ帳 | ナノ


(DQ4|勇ピサ勇)

「…………何の、つもりだ。」
数秒の沈黙の経て目の前に横たわるピサロの口から発せられた声は、地を這うような低いものだった。眉間に寄った皺は深く、射抜くような鋭い視線は、一般人が見たらそれだけで身をすくませる程に鋭い。ただ、あくまでそれは一般人の話であって、自分には当てはまらない。
射殺さんばかりにこちらを睨みつける瞳の奥に戸惑いの色がちらついているのを、ピサロは自分で気づいているのだろうか。

「何って言われても、別に。」
ピサロの腹の辺りに馬乗りになったまま、率直な意見を述べた。途端に深くなった眉間の皺を人差し指で押さえつけて、にこりと笑った後、口を開く。

「別に、首締めて殺そうなんて思ってないよ。」
「………」
「ピサロが思ってる程、俺はピサロを嫌ってないし、憎んでない。むしろ、」

言葉を区切って顔を近づけると、髪が重力にしたがって零れ落ちて視界を狭める。そろそろ切った方がいいかもしれない。
掠めるようにした触れるだけのキスは何の味もしなかった。唇が触れる寸前、ピサロが目を見張ったのが視界の端に移った。

「…こんなことが出来る程度には、俺は好きだよ、ピサロのこと。」
「……気でも触れたか。」
「何とでも。」
口の端をつり上げて薄く笑って見せた次の瞬間、視界が反転する。部屋の照明のせいで逆光になって、ピサロの表情はよく分からない。

「貴様に主導権を握られるのは気に食わない。」
低い声が上から降ってくる。自分の体がベッドに沈むのをどこか他人事のように思いながら、ぼんやりと照明を眺めていた。顔の横に手がつかれ、ピサロの顔が近づく。それに合わせて安物のシーツがくしゃりと歪む。別段抵抗する気もなかったのでそのまま身を委ねると、噛みつくようにキスをされる。歯列を割って入ってきた舌に自分の舌を絡めて、目を閉じた。


二度目のキスは、やっぱり何の味もしなかった。

(111023)

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