case:K.Shiraishi 2



本日は2月14日月曜日。
俗に言うバレンタインデー。
恋人同士で甘く過ごすはずの日のはずなんに、正直俺の心はざわめきっぱなし。

と、言うのも彼女であるはずのひなが、一向にチョコをくれへんから。
俺に何かを渡す素振りは微塵もみせんクセに、謙也や他のやつらには手作りチョコをばらまいとる。
俺より先にひなのチョコを受け取ってたんが悔しくて、謙也と言い争っとったらオサムちゃんに殴られるし、今日は人生最悪のバレンタインや。
それでも、好きなもんは最後までとっとく派のひなが最後まで俺に渡すのを焦らしとる可能性もあったから、部活が終わるまではまだ我慢できた。

けど、そんな俺の堪忍袋もひなの一言でぶち切れた。

「は?チョコ用意してへんって、ホンマか?」
「そうだけど、問題ある?」
問題大アリやっちゅうねん!
「ひなさんや、ちょいと俺と自分の関係言うてみ?」
「彼氏彼女」
戸惑いで言葉遣いが変になった俺をみても彼女は平然と答えを返す。
「やったら、チョコあるんが普通やろ?」
「でも蔵ノ介、チョコたくさん貰ってるじゃない」
「うっ、」
ダンボール2箱分とひなに貰うた紙袋の中、ぎゅうぎゅうに詰まってるチョコの山。
やっぱり受け取ったらあかんかったんやろか。
もしかして、紙袋渡してきたんも俺を試すため、とか!?
脳内で様々な可能性をはじき出すが、どれも的確な答えやと言えん。
やってひなは嫌なことあったらちゃんと口にして言う子やし。

「それに、蔵ノ介にはチョコじゃないもの、ちゃんと渡してるじゃない」

あっけらかんとした口調でひなが言う。
彼女が言ったものに該当するんは、チョコではちきれんばかりに膨れ上がった紙袋。
まさか、チョコの代わりはこれなんか!?
あまりの衝撃に我を失う。
「よう、分かったわ。ひなは俺んこと嫌いになったんや」
自分でも恐ろしいほど低い声が出た。
「そんなことない、」
「やったら、この扱いの差は何なん!?他のやつらのほうがよっぽど本命っぽいやないか!」
彼女の反論を遮って捲くし立てると、彼女は大きな瞳に涙を溜めた。
泣きたいんはこっちやっちゅうねん!

「……蔵ノ介の馬鹿」
「は?」

激昂する俺に対して、静かな口調のひな。
憎まれ口に眉を吊り上げて聞き返せば、小さくもういい、とだけ聞こえた。

「蔵ノ介なんてもう知らないから。だいっきらい!」

ひなは潤んだ瞳で俺を真っ向からにらみ付けた後、部室の扉を勢い良く開け放って飛び出して行った。



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