case:K.OShitari 4
そして始まる地獄の午後練。
どんなけハードになるんやろう、と怯えとったけど、どうやら昼休み中に散々ひなに説教されたらしく、白石が課した理不尽なメニューは全部取り消され、俺もみんなと同じで校庭5周ですんだ。
俺のチョコも無事鞄の中で眠っとるし、めでたしめでたしや。
そう思っとったのに。
地獄は四天宝寺恒例のおやつタイムに始まった。
「わーい!チョコやー!」
無垢な笑顔でひなから、俺が受け取ったんとおんなじ包みを受け取る金ちゃん。
その瞬間、俺の隣の人物が醸し出す空気が数段冷えた。
金ちゃんがラッピングを適当に解いて、中身を確認しとると千歳が興味深そうにそれを覗き込んだ。
「これは何かと?」
「トリュフだよ。千里君の分もあるから金ちゃんのとっちゃダメだよ」
物欲しそうに眺めとった千歳にもひなはおんなじ箱を渡す。
金ちゃんと同じく、千歳は早速そのトリュフを口に運ぶと「うまか〜!」と叫んだ。
俺の隣でその様子を見とった白石は、周囲の温度を更に下げた。
そこの自由人2人!
頼むから空気読んでくれ……!
「あ、銀さんと小石川君にもね」
俺の心の叫びを見事に無視して、ひなのチョコを頬張る金ちゃんと千歳の横におる銀たちにもひなは同じ物を渡す。
俺が間違うてました。
金ちゃんや千歳よりも誰よりも。
空気を読まなあかん人物はひなや。
これ以上自分の彼氏を凶暴化させんでくれ……!
部室は暖房きいとるからめっちゃあったかいはずなのに、めっちゃ寒いんやでココ!
「ひなちゃん、ワテらは?」
「勿論、小春ちゃんとユウジ君にもあるよ」
っておいぃぃ!小春ぅぅぅ!
思わずユウジを真似てつっこんでしもうた。
「喧しいわ、一氏!」
「いや、今言うたのケンヤやで!?」
「そうなんっ!?ケンヤ君ならかまへんわぁ〜。ロックオン」
「そんな小春ぅぅ」
……どうやらまたもや心の声がもれとったらしい。
ちゅうか俺ならええわって言われても、正直困るで、小春。
そして、えも言われぬ恐怖に身を震わせる俺を、財前がにやりと一瞥した。
え、何や嫌な予感しかせえへんのやけど。
「ひな先輩、俺のは?」
や っ ぱ し か !!
頼むから火に油を注がんといてやー!
ちゅうか財前、お前俺が困ってるのわかっててやってるやろ!
「はいどうぞ」
ひなもあげたらあかんやろ!
1番最初(白石が貰うてないなら多分)に貰うた俺が言うのもあれやけど。
ちゅうか財前もこれ見よがしに見せびらかすの止めなさい。
ちゅうかホンマ勘弁してや。
絶対白石から半径1メートル以内は氷点下やで!?
「そーいやひな先輩。部長にはどんなんあげたんです?」
財前、爆弾投下。
「蔵ノ介にチョコはあげてないよ。最初から用意してないもん」
不発やったらええなぁ、なんちゅう俺の希望的観測は、ひなによってあっけなくも打ち砕かれてしもた。
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