case:K.Oshitari 3



「オサムちゃん、俺のチョコ!!」
べしっ!

道場破りよろしくっちゅう勢いで、職員室の扉を開けると同時に後頭部に衝撃が走る。
「謙也、とりあえず職員室来るときはもうちょい落ち着けっちゅー話や」
呆れ顔のオサムちゃんの手には何故かハリセン。
そっちこそ、そないなもんどっから出してきたっちゅー話や!

「文句言うとチョコ、返したらへんで?」
「うわわっ、それだけは……って!何も言ってませんで、俺!」
もしかして思わず口に出とったか?
それともまさか、オサムちゃんも財前みたいに心が読めるとか!?
「そのまさかや。何と言っても財前に心の読み方教えたんはこのオサムちゃんやからなー」
「マジですか!?」
「ホンマやホンマ……って、そないな訳あらへんやろ!お前が全部喋っとるからに決まっとるわ!」
オサムちゃんが裏手でつっこむと、職員室中からどっと笑いが起こる。
よっしゃ、1本とれたで!
オサムちゃんもノリノリで「ありがとうございましたー」何て言うとる。

「って、笑いはどうでもええねん!そんなことより俺のチョコ!」
はっと我に返ってここに来た目的を思い出すと、オサムちゃんが小さく舌打ちした。
もしかして、ホンマにこの人俺がひなから貰うたチョコ食う気やったんか!?
「冗談や冗談。生徒のもん勝手にどうこうしたりせえへんわ」
と、オサムちゃんは机の上に乗っていたワインレッドの包みを渡してくれる。
お帰り、俺のチョコ!

「謙也、ちょい待ち!」
喜び勇んで教室へ戻ろうとした俺を、オサムちゃんが呼び止めた。
「なん?」
「とりあえず、チョコは隠して帰り」
「は?」
訳分からん俺に、オサムちゃんが手で屈めと合図する。
「白石に見つかるとまた揉めるで。五十鈴川、白石にチョコ用意してへんみたいやから」
「へ?」
思わず間抜けな声が出た。
耳元で小声で話すオサムちゃん曰く、さっき職員室にオサムちゃん用のチョコを持ってきたひなに俺たちの争いの原因について訊いたところ、そんなような答えが返されたらしい。
あぁ、それで白石にしては珍しく固執しとったんかと妙に納得。
そりゃ、彼氏である自分が貰えてへんのに、目の前で他の男がチョコ貰っとったら、怒りもするわな……。
同情はしたるけど、このチョコは俺のやから譲れへんことにかわりはない。

「因みに、今度お前ら2人が五十鈴川のチョコが原因で授業中に暴れとったら、迷わず没収して食ってやって下さいって午後の授業の教科担任に言うてあるから」
それ、自分のもんにしたかったら気をつけや。

恐怖を打ち消し、チョコをかけて白石に挑もうとした俺の決意はオサムちゃんの一言で音を立てて崩壊した。

とりあえずチョコは白石の目に触れんようにしておこう。



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